• どこまでも続く雪原、分厚い氷、愛らしいペンギンたち。そんな大自然が広がる南極に、南極観測隊が毎年派遣されているのはご存知の方も多いでしょう。でも、南極観測隊と聞いても、自分の生活とはかけ離れたものと思っていませんか? しかし実は、私たちの暮らしに直結する観測をたくさん行ってくれているのです。そこで、フジテレビが同行取材を行った、第64次観測隊に参加している名古屋大学の栗田直幸先生に、素朴な疑問をぶつけてみました。(タイトル写真提供/フジテレビ)

    Q7 南極でのごみ事情を教えてください。

    南極の環境を保全するため、ごみは捨てずに、すべて持ち帰ります。

    野外活動で出たごみは、昭和基地に持ち帰り処理を行うため、昭和基地の分別ルールに則って分別します。ごみの分類は基本的には国内とほぼ同じですが、分別方法が多少異なります。たとえば、食品がついたプラ容器はすべて可燃ごみとなります。一方、ティーバッグなど水分を多く含む可燃ごみは、生ゴミとして処理されます。

    昭和基地では、可燃ごみは全て焼却しますが、焼却後に出た灰などの残留物は全て梱包して日本に持ち帰ります。生ごみは、生ごみ炭化装置で処理された後、炭を日本に持ち帰ります。もちろん不燃物も持ち帰りとなります。そのため、空き缶は水ですすいだ後に小さく潰して捨てる、空き瓶も破砕機を使って小さな破片にまで破砕します。

    野外観測では、生活ゴミ以外に排泄物も持ち帰ります。野営地にトイレ用のテントを立て、その中に仮設トイレを設置します。そして、観測期間中に出た排泄物を大きな麻袋に入れて昭和基地に持ち帰ります。昭和基地では、排泄物は生ごみとして処理されます。南極の自然を守るため、なにひとつ南極に残さないエコ生活を心がけることが隊員には求められています。

    画像: 昭和基地(写真提供/フジテレビ)

    昭和基地(写真提供/フジテレビ)

    Q8 南極での観測は過酷なものだと思います。どのような点が大変なのでしょうか?

    最も大変なことは、提案した観測が必ず実施できる保証がないことです。南極大陸に至る道中には、「暴風圏」と呼ばれる荒れ狂う海域や、氷に閉ざされた「海氷域」が待ち構えています。南極への航海は、「砕氷船」(氷海の氷を割りながら航行する船)を用いますが、年によっては氷が厚く、砕氷船でも南極大陸に近づけない場合もあります。

    南極大陸に到着後も気が抜けません。「ブリザード」と呼ばれる吹雪に遭遇すると、台風に匹敵する強風が吹き荒れ、目の前にある物すら見えなくなります。ブリザード発生中は観測地への移動や研究観測を実施できず、ブリザードが長時間継続する場合には、観測地への移動や観測の継続を断念することになります。今回、ブリザードに2回遭遇しましたが、幸運なことに、いずれも観測終了後でした。ブリザード発生中は、チーム全員が雪上車内で肩を寄せ合い、嵐が過ぎ去るのを待ち続けました。

    これまでシベリアやチベット高原など、僻地と呼ばれる場所で研究観測を行いましたが、それらの土地には少数ながら地元の方が暮らしており、移動や生活面でサポートを受けることができました。しかし、南極には居住者はおらず、ブリザード時に退避する場所もありません。もちろん、物資の現地調達は不可能であり、装置が故障しても助けを借りることができません。今回の観測も、さまざまなトラブルを予測して準備しましたが、どれだけ準備を重ねても不安を払拭することはできませんでした。

    画像: 南極観測船「しらせ」(写真提供/フジテレビ)

    南極観測船「しらせ」(写真提供/フジテレビ)

    画像: Q11 実際に南極に到着して感じたこと、観測を行って感じたことはなんですか?

    栗田直幸(くりた・なおゆき)
    名古屋大学・宇宙地球環境研究所准教授。専門は、地球惑星科学(地球化学、気象・気候学)。これまでにシベリアやチベット、赤道インド洋など世界各地で、観測活動を実施。第60次、第64次南極地域観測隊に参加。(写真提供/フジテレビ)

    <監修/国立極地研究所 取材・文/編集部 取材協力/フジテレビ>



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