黄金週間に始まる美しい月、松煙染めをきもの風に
暦の上では立夏を迎え、太陽は光り輝き、日によっては汗ばむほど。単衣(裏地なし)のきものを着はじめるのはこの時期。そして紬のようなしっかりした風合いの浴衣も解禁します。
燻した松の根からつくられる染料を使った松煙染め浴衣は、グレーの落ち着いた色がおとなっぽく、私のレパートリーのなかでは単衣のきものと同列の扱いです。
5月は長襦袢を着て、単衣向きの素材の半衿をつけます。半幅帯は通年用の透け感のないものを選び、お太鼓風の帯結びでボリュームを出してみてはどうでしょう? 帯締めや帯揚げをプラスすれば、浴衣のラフな感じを抑えた外出着になります。
この時期のポイントは、全身を鏡で見たときに、“薄っぺらく見えない” ということです。
どんなに暑くても5月。フォーマルきもののルールではまだ袷(裏地付き)の季節です。
浴衣選びも、帯や帯結びにも、軽やかだけれど少し重みがほしいところ。“重め” を意識した上で、爽やかな色や初夏らしい明るい柄を取り入れたら、いっそうおしゃれに見えます。
これまで何度もこのシーズンに浴衣を着てきましたが、色調抑えめの松煙染めはとりわけ程合いがよく、風薫る季節の常連になりました。
本記事は『おとなの浴衣、はじめます』(技術評論社)からの抜粋です
〈撮影/豊田都〉
山崎陽子(やまさき・ようこ)
1959年福岡生まれ。マガジンハウスで雑誌『クロワッサン』『オリーブ』『anan』編集。その後、フリーランス。『クウネル』(マガジンハウス)『エクラ』(集英社)『つるとはな』創刊から編集、ライターとして参加。女性誌、ムック、書籍の編集、ライティングの仕事をしながら、洋服ブランド『yunahica』を立ち上げ。浴衣歴は11年に。インスタやさまざまなイベントでの肩ひじ張らない洒落た着こなしが人気。著書に『きものが着たくなったなら』『きものを着たらどこへでも』がある。最新刊『おとなの浴衣、はじめます」』発売中。
インスタグラム:@yhyamasaki
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長年ファッション誌やライフスタイル誌で活躍する編集者、山崎陽子さんが提案する、30代からの浴衣入門。浴衣は冬以外、1年のうち約5カ月、春先から秋口まで楽しむことができます。暑い季節が長くなったいま、できるだけ長い期間を着ることを考えた浴衣選びと着こなし、行き先に応じたコーディネートや着付けをわかりやすく紹介する1冊です。
イベント情報:
◇2023年5月12日〜14日 トーク会 (染と織たかはし・岡山)
◇2023年5月25日 トークイベント 京都きもの市場(丸の内KITTE・東京)
◇2023年5月24日~30日 イベント「ISETAN meets 山崎陽子 ~おとなの浴衣、はじめます~」( 新宿伊勢丹本館7階・ 東京)
(27日、28日 各日14:00 本館7階 呉服売り場にてトークショー開催))