(『あふれる日々を、ととのえる。』より)
旅先でも、暮らしを楽しむために持っていくもの
打ち合わせだったり、作家さんの個展だったり、洋服の展示会だったりと普段から出張の多い生活をしています。
ですから、旅先でも味気ない暮らしにならないように、何かしら楽しめるものを鞄にしのばせるのが私の流儀。
針仕事が好きなので、ちょっとほころびた繕いものと針と糸の入った小さな裁縫道具。ダーニングをするために、かかとの薄くなってしまったお気に入りの靴下とダーニングマッシュルーム、そして簡単な旅用お茶道具。
朝の気持ちのいい時間に、ホテルを抜け出して散歩をしたあと、シャワーを浴びてから、自分のためだけの一服のお茶を点てるのです。
好きな道具と好みのお抹茶ーーこれがあるだけで、仕事であるはずの日常が非日常に変わります。そのせいか、ホテルに備え付けのお茶を飲まなくなりました。
お抹茶があるだけで、今日も頑張ろうと思える
どこにいても、どんなに忙しくても、楽しむことはできるはず。とくに、旅先でのお抹茶は心を落ち着かせるための必需品と言っても過言ではありません。
トランクにお道具を収めさえすれば、幽玄なお抹茶の世界に導いてくれるのですから。
ホテルの部屋で自分のためだけの一服をいただくと、「ああ、今日も頑張ろう」と思えるから、お茶って本当にありがたいものですね。
本記事は『あふれる日々を、ととのえる。』(PHPエディターズ・グループ)からの抜粋です
〈撮影/木寺紀雄〉
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石村由起子(いしむらゆきこ)
1952年、香川県高松市生まれ。1983年に奈良市でカフェと雑貨の店『くるみの木』をはじめ、全国から人が集まる人気店へ成長させる。その後、三重県VISONの「くるみの木暮らしの参考室」や滋賀県長浜市の「湖のスコーレ」プロデュースなど幅広く事業を手がける。現在は奈良を拠点に、日本各地で地域活性拠点や、商業施設のプロデュースを行なっている。おもな著書に『小さな幸せみつけた』(主婦と生活社)、『奈良のたからものまほろばの美ガイド』(集英社)、『私は夢中で夢をみた』(文藝春秋)、『自分という木の育て方』(平凡社)、『おとなの奈良めぐり』(PHPエディターズ・グループ)など多数がある。
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