(『天然生活』2021年11月号掲載)
自分を観察して、切り替えるチャンネルを持つ
教室で風土と体に根差した料理を伝えながら、無農薬、在来種の野菜をベースとする直売所「タネト」を夫婦で営む奥津典子さん。取り出したのは、なんとたわしでした。朝晩に体をこするのだとか。
「肌を刺激することで、むくみの元になっている水分が上手に出せるようになるんです。わが家では、家族みんながマイたわしを持っているんですよ」と笑います。
もちろん食も大事だけれど、時には疲れて料理がつくれない日もあるし、いつも手間や時間をかけて食事の準備ができるわけでもありません。たわし1個で自分の体が整えられたらなにより。
実は4年ほど前から玄米菜食から肉や魚も摂るように変えたそう。
「菜食だけだとなぜか不調を感じるようになりました。いま、地球全体の環境が変わっているんですよね。マクロビオティックの本当の意味は『大きな視点の命の手仕事』という意味。環境に合わせて食べるというのが前提なんです」
大事なのは「これがいい」と決め込まず、絶えずあたりと自分を観察し、パチリと切り替えることができるチャンネルを持つこと。
「健康や元気は手段です。『健康のために』ということなんて忘れちゃうほど夢中になれる。そんな状態が一番ですね」
1 たわしで全身をこする
たわしで手足や体全体をこすることで、むくみが取れ、血行やリンパの流れ、便通がよくなります。お風呂やシャワーで、体を濡らしてからやるのがおすすめ。奥津さんは、朝は庭仕事などを終えてからシャワーを浴びるとき、夜はお風呂に入ったときに。
「出張先にもたわしを持っていきます。こするだけでしゃきっとして疲れが取れるんですよ」
むくみが取れると、肌もきれいになるのだとか。
2 足の仕組みをうまく使う
朝起きるとまず、かかとを突き出すようにして、ふくらはぎをしっかり伸ばします。全身の血行がよくなり、頭まできちんと血液が届くようになるそう。
「疲れているのは、意外に体ではなく頭なんです」と奥津さん。さらに足の指と指の間を刺激することで、神経の働きが活発に。歩くときには、かかと重心にならないように注意。厚底の靴や下駄を履くと、足の指にしっかり力が入ります。
3 一日1杯の野菜スープとときどき玄米
野菜をコトコト煮るスープづくりは、だれでもが取り入れやすい健康法。奥津さんは、干ししいたけ、海藻や鰹節、卵などを日替わりで加えるそう。味噌やしょうゆで調味すると、腸内環境も整います。以前は毎日玄米を食べていましたが、肉や魚を取り入れるようになってから、週に2〜3回に。
「玄米を食生活に入れると、なにより便秘がなくなるのがいいですね。便秘は万病の元ですから」
4 手でこすることで体を温める
小指の付け根の少し下は、東洋医学では、腸内環境と血行の状態を示すといわれています。ここを手のひらとこすり合わせるだけで、体がポカポカしてきて汗が出ます。
「一日1分やれば、冷え性が改善されて、血行がよくなります。料理教室でも、『レディー・ゴ〜!』とみんなでこすって温めると、みなさん目がぱっちりしてかわいくなるんです。『なんでもできるスイッチ』が入って、活発に」
病気にならないための私のお守り
マクロビ3点セット
ちょっと調子が悪いときに、ぬか漬け、梅醤番茶、ごま塩の3つがあれば乗り切れます。現代人の疲れの原因は、食べているようで必要な栄養素が不足しているから。この3つを、「台所のサプリメント」として常備したいものです。
〈撮影/繁延あづさ 取材・文/一田憲子〉
奥津典子(おくつ・のりこ)
「台所の学校」主宰。2003年、夫とともに「オーガニックベース」を開業。2019年より長崎県雲仙にオーガニック直売所「タネト」を開店。https://www.organic-base.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです