• 家族みんなで家事をシェアしている、手づくり暮らし研究家の美濃羽まゆみさん。それぞれが納得して楽しく家事ができるように、「家族会議」を大切にしているといいます。家族全員がフレキシブルに動けて、お互いをフォローし合えるようになるには? 日ごろから美濃羽さんが心がけていることや実践していることを、教えていただきました。

    わが家の家族会議はこんなふう

    夫婦共働きで、高校生・小学生の子どもがいるわが家の家事は、各自ができることをできる範囲で、ひとつのことを「担当」するスタイル

    なので「お手伝い」という概念ではなく、「〇〇は私の仕事」と思ってやってくれています。

    では、実際家族でどんなふうに話し合い、分担を決めているのか。

    前回に続き、今回はシェアに至るまでの、家族会議の実際の様子を紹介してみたいと思います。

    家族会議、それはごくごく大まじめに

    わが家の家族会議は、こんなふうに進みます。

     「見直し時期にきた」とリーダー(私)が判断したら、メンバースケジュールを調整、招集のうえ会議

     前回の決定事項を振り返り

     現在の家事内容とその時間を「見える化」して(エクセルの表などに簡単にまとめる)みんなで確認、各自どんなことが担当できそうかを話し合う

     実行

    (そして、また数か月~数年後にに戻る、という流れです)

    自分で書いていて思わず笑っちゃいましたが、こんなふうに大まじめに、そしてビジネスライクにやるのには、ちゃんと意味があるんです!

    ひとつは、お互いが対等なメンバーであることを自覚するため

    そして、「家族だからこれぐらい、いいよね」という甘えを議論に混ぜ込んでしまわないようにするため。

    「不公平だからみんなもっと手伝ってよ!」というような感情論では、冷静な論議にならないからです。とはいえ、たまにはそんな感情が表に出てしまうこともあります。

    口がたつ夫や娘を前に、「これは冷静に話すことが難しそうだ……」と感じたときは、メールや手紙など文章にすることを心がけています。

    すると、自分の考えを客観的に見ることができるように。そのうえ、冷静に話し合うこともできるのです。伝わらないなら、「伝え方」を変えてみるのもおすすめですよ!

    いつでも原点に立ち返れるように

    そもそも、家事とは何なのか。何のために、誰のために、する必要があるのか。

    原点に立ち返ると見えてきたテーマが「家族の、家族による、家族のための仕事」。これは前回お話しました。

    会議の目的は、このテーマにのっとって、各自がいまのスキルでできることを模索する。

    リーダー(私)は、そのために会議が大事であることを、チーム全員にことあるごとに伝えています。

    高校1年生の長女ゴンが今年に入り「おかずづくり担当」になったのも、こういった経緯からでした。

    (表をみながら)何かこの中でできそうなことある?

    ゴン

    私は決まったことを決まった時間にやるのは無理

    そっかー。でも家事は大体において次の作業と連続しているしなあ……

    ゴン

    こんなに食器洗いに時間がかかるなら、いっそ使い捨て容器を導入したら?

    確かに、その発想はなかった。ただ……(電卓をたたいて)1人ならまだしも4人だとけっこう高くつくような

    ゴン

    そらあかんな

    買い置きの手間や保管場所のことを考えると、かえって手間が増えてしまう可能性もあるかもしれないな

    ゴン

    うーん、この中でできることかあ。私の性格的にはもっとこう、空欄を埋めるようなことがいいんやけどな

    空欄を埋めるってどういうこと?

    ゴン

    家事って際限がないやんか。だけど私の性格では、とことんまでやらないと気がすまないねん。だから初めから定数というか範囲が決まっていて、ひとつなくなったらそれを埋めていくみたいな、そんな感じがいいんやけど

    なるほど。じゃあ……

    そんな論理の引き算から編み出されたのが、彼女の「3つの容器のおかずづくり」。

    ひとつのおかずを食べ切ったら私から声掛けをし、冷蔵庫の中にある材料などと相談しながらまたひとつ補充する、という仕事だったというわけです。

    そして、時間のかかる食器洗いはというと、意外に水仕事が好きだということが最近になって判明した夫が引き受けてくれることになったのでした。

    でも、私たち家族もこんなふうな面倒な手続きをふむようになったのは、つい数年のこと。

    かつては、私が限界を感じて大爆発したあと、半ばキレ気味に勝手にできそうなことを割り振りして押しつけたり、逆に褒めてやらせようとしたり、こざかしいことをしたことも。

    でも、それでは本人たちの納得感もないし、責任感も生まれにくいばかりか、みんなの苦手意識ばかり先立って継続しませんでした。

    シェアで減るわけじゃないけれど……

    いまならなぜ、その方法が続かなかったのかがよく分かります。それは私が、夫や子どもを「チームの一員」として認めていなかったから。

    誰だって、ただいわれたことだけをこなすのは、楽しくないはず。

    そう分かっていたのに、やらせようとしてしまったのは、私が「家事ができる」という優位に立って、夫や子どもたちをどこか下に見ていたからだと気づきました。

    でも、いまのように担当制にして、得意を持ち寄り、苦手はやり方を変えていくようになってから、家族みんなの意識が変わってきたように思います。

    家事シェアってめんどうです。

    シェアしたって家事の全体量が減るわけじゃないし、むしろ話し合いなど手間が増えることもあります。だから「得意な人が手早くやってしまうほうがずっと効率的」。かつての私はそう思っていました。

    でもあるとき、それまで病気知らずだった私が、無理がたたって数日家事ができなかったことが。そのときの台所の荒れようといったら……!

    シンクの生ごみはそのまま、食べ残しも当然のように冷蔵庫に入れておらず、小さな虫さんまで飛んでいる始末。体調不良も相まって、くらくらめまいがしました。

    さらに、ふだん一日1.5食の小食の夫は、子どもにも食事をとらせていなかったことが分かり、これは大問題だと見直しに着手することにしたのです。

    そして家族会議はつづく

    いまは元気いっぱいな人でも、病気やケガがきっかけでいつ動けなくなるか分かりません。

    それならば、家族全員がフレキシブルに動けて、いつでもお互いをフォローし合える状態にしておくほうがずっと安心。小さな虫さん事件は、そのことを私に痛感させてくれました。

    だから、そのときの状況、子どもたちの成長度合い、夫と私の抱えている仕事の量やかかる時間などをふまえ、わざわざでも会議の時間を設け、回を重ねてすり合わせ、そのときそのときで最適解を見つけていくことにしたのです。

    前回もお話しましたが、家事に正解があるわけじゃありません。ときと場合によっては、娘のいうように、使い捨て容器がぴったりくるシーンがあるかもしれません。

    だから、いまの私たちにふさわしい「ええ加減」を求めるべく、これからも会議は続くのです。

    画像: かつては「私ばっかり」と家族に恨み言をぶちまけていたことも。あるときそれを紙に綴ってみたところ、「え、これってただの思い込み?」と冷静になれてびっくり。それからは、感情をぶつけてしまう前に書いて思いを整理。相手にぐんと伝わるようになりました!

    かつては「私ばっかり」と家族に恨み言をぶちまけていたことも。あるときそれを紙に綴ってみたところ、「え、これってただの思い込み?」と冷静になれてびっくり。それからは、感情をぶつけてしまう前に書いて思いを整理。相手にぐんと伝わるようになりました!

    次回は、家事シェアを通じて見えてきたものについて、お話してみたいと思います。



    〈写真・イラスト・文/美濃羽まゆみ 構成/山形恭子〉

    画像: そして家族会議はつづく

    美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
    服飾作家・手づくり暮らし研究家。京町家で夫、長女ゴン(2007年生まれ)、長男まめぴー(2013年生まれ)、猫2匹と暮らす。細身で肌が敏感な長女に合う服が見つからず、子ども服をつくりはじめたことが服飾作家としてのスタートに。

    現在は洋服制作のほか、メディアへの出演、洋裁学校の講師、ブログやYouTubeでの発信、子どもたちの居場所「くらら庵」の運営参加など、多方面で活躍。著書に『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)amazonで見る 、『FU-KO basics. 感じのいい、大人服』(日本ヴォーグ社)amazonで見る など。

    ブログ:https://fukohm.exblog.jp/
    インスタグラム:@minowa_mayumi
    voicy:FU-KOなまいにちラジオ



    This article is a sponsored article by
    ''.