(『天然生活』2019年10月号掲載)
仕込んでおいて、包丁いらずで仕上げる料理
「毎日忙しいけど、きちんと食べたいし、家族にも食べてほしい」そう思っている方たちに便利なのが、つくりおきおかずです。味がしみてうま味が増すなど、よい点も多いけれど、でき立てあつあつでいただけるものもレパートリーにあると、さらにうれしいはず。
そこで、アウトドアなどでも、「仕込んでおいて、包丁いらずで仕上げる料理」を楽しむきじまさんに、日常使いができる「かんたん仕込み」を伺いました。
「肉を焼く場合は、単体で漬け込むほうが水分も出ず、おすすめですが、煮物にするなら肉や魚と野菜、調味料など、すべて一緒に漬けるのがコツ。味がしみて、野菜からはかなりの水分が出ます。鍋に入れてふたをし、火にかけるだけで無水調理が可能になるんです」
あとで調味料や水分を加えたり、追加で材料を切って加える必要もないので、主婦の方だけでなく、ふだん料理をしない家族への、留守番ごはんとしても重宝します。
「みりん、酢、梅、スパイスなどを加えて漬け込みますが、これらは肉をやわらかくするだけでなく、保存にもひと役買います。この季節には大事なポイントです」
副菜は、きのこ、にんじんなどを冷凍して活用。繊維が壊れて食感がよくなり、汁ものやあえもの以外にも、アレンジは無限です。
【主菜】 漬けておいて、漬け汁ごと煮る
鶏肉のトマト甘酢煮
漬け込んだ肉はしょうゆ味がベース。はちみつと黒酢でやわらかくなり、酸味とまろやかな甘味も加わります。トマトと玉ねぎから出る水分を利用することで、鍋に入れて火にかけるだけで、水を足さずに無水調理ができます。
「密閉保存用袋に入れたら、酸化しにくいよう、空気を抜くことが大切です。水を張ったボウルや鍋に袋を沈めて、空気を口の方に寄せていき、抜くとよいですよ」
はちみつの甘味と黒酢のまろやかさ、トマトの酸味がしょうゆ味に合います。
材料(2人分)
● とりもも肉 | 1枚 |
● トマト | 大1個 |
● 玉ねぎ | 1/2個 |
● A | |
・しょうゆ、黒酢 | 各大さじ2と1/2 |
・はちみつ | 大さじ1と1/2 |
・赤とうがらし(小口切り) | 1本分 |
つくり方
ステップ1<仕込み> 調味液で漬けて、密閉保存
トマトはへたをくり抜いて、ひと口大に切る。玉ねぎは幅1cmのくし形に切る。とり肉は6等分に切る。密閉保存用袋に入れてAを加えて混ぜ、空気を抜き、冷蔵庫で味をなじませる。
※この状態で、冷蔵庫で2〜3日保存可能。
ステップ2<調理> 汁ごと煮るだけ
鍋に袋の中身を入れて、中火にかける。煮立ったらふたをして弱火で10分ほど煮、ふたを取って中火で5分ほど汁けを飛ばして火を止める。
【副菜】小分け冷凍したきのこをあえる
冷凍きのこで
きのこの柚子こしょう蒸し
冷凍のまま、柚子こしょうと調味料を加えてレンジに。香りのよい、和のあえものです。
きのこは、ゆでて塩漬けにする保存法もポピュラーですが、そのまま冷凍しても使いやすいです。
「数種類のきのこを合わせてほぐし、冷凍しておくと、レンジにかけてあえものにしたり、炒めたり、なにかと重宝します。汁ものにもそのまま入れられますし、解凍せずに使えるのが便利ですね。また、繊維が壊れることで、独特の弾力と食感が出て、生のときよりおいしくなる気がします」
材料(2人分)
● しめじ、えのきだけなど | 合わせて150g |
● A | |
・柚子こしょう | 小さじ1 |
・ごま油 | 小さじ1 |
・塩 | 少々 |
ステップ1<仕込み> 小分けして冷凍
きのこは石づきを切り落とし、密閉保存用袋に入れて平らにし、冷凍庫に入れる。
※2週間ほど保存可。
ステップ2<調理> 調味料ごとレンジであえる
耐熱皿に冷凍きのことAを混ぜてふんわりラップをかける。600Wの電子レンジで4分ほど加熱し、全体をあえる。
* * *
<料理/きじまりゅうた 写真/川村 隆 スタイリング/久保原惠理 取材・文/吉田佳代>
きじまりゅうた
3代続く家庭料理研究家の家庭に育つ。雑誌やTVなどで活躍。『きじまりゅうたの小腹がすきました(NHK総合)』では、幅広い年齢層に、基本を踏まえた簡単な料理を紹介。温かな人柄にファンが多い。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです