(『天然生活』2023年11月号掲載)
手刺しゅうへの愛情はコーラル&タスクの原点
ステファニーさんの想いがつまった刺しゅうのクッションやナプキンが日本のお店に並ぶようになったのは、2011年ごろ。
いち早く雑誌で取り上げたのが、インテリアスタイリストの石井佳苗さんです。
その後、漫画家のほしよりこさん、俳優の石田ゆり子さんともつながり、2020年からほしさんの「猫村さん」シリーズが始まり、今年は石田さんのハナコプロジェクトとのコラボレーションも実現しました。
「ヨリコとのものづくりは、人生の贈り物のようなもの。お互いから学び続け、より友情を深めました。ユリコのハナコプロジェクトは、彼女から活動や構想を聞いたとき、その夢を実現するためになんでもやろうと決めたのです」
日本ならではのアイテムが誕生したこともあいまって、創業15周年の節目に、いままでのものづくりをまとめた書籍を、日本で出版することに。
この本のために、ステファニーさんは、コーラル&タスクの原点である手刺しゅうで5つの作品を仕上げました。
「作品に共通するテーマは、家族や友人と楽しめるアウトドアのアクティビティ。幼いころの楽しかった夏の日々をひとつひとつ思い出しながら描きました。手刺しゅうへの愛情はコーラル&タスクのルーツ。久しぶりに手刺しゅうに取り組み、その大切さを再確認できて、本当にうれしかったです」
2016年、ステファニーさんは慣れ親しんだニューヨークからワイオミングへ移住します。
「さまざまな要因があったのですが、ひとつには私たち夫婦に子どもがいなかったこと。友人たちは子どもが生まれると郊外へと引っ越し、彼らと楽しく過ごす時間が減りました。私たちは仕事以外の楽しみを自然のなかで過ごすことから見いだしました。いままで訪れた地域で最も自然に親しめる場所が、ワイオミングだったのです」
ワイオミングはアメリカで一番人口の少ない州。ステファニーさんたちの家があるのはボンデュラントという小さな町で、壮大な山脈に囲まれた渓谷にあります。
「静かで、人里離れた未開の土地です。新鮮な空気と水、ワイルドフラワー、天体観測……。息をのむような景観が広がっています」
住まいは築35年以上のログキャビン。そこから歩いて行ける距離にアトリエを設けました。
「家の中で気に入っている場所はアウトドアデッキ。できる限り屋外を楽しみたいので、寒い季節以外はよくここで過ごします」
日課は、仕事、ヨガ、運動、犬の散歩、ニワトリの世話、掃除。
「朝日とともに目覚め、起きたらまずキッチンでコーヒーを淹れます。朝の時間で心がけているのは、スマートフォンを見ないで、日が昇る景色を楽しむことです」
ワイオミングに移住してから、毎日、長い散歩をするようになったとステファニーさんはいいます。
「日々、たくさんの動物にも出合っています。そのおかげで、ここがいっそう特別な場所になりました。コーラル&タスクとして動物をモチーフにデザインするからには、その動物の魅力をお客さまに存分に伝えて、その存在により興味をもってもらいたい。そして動物たちが直面する環境にも関心をもってもらえたら。そう願い、日々、デザインを続けています」
〈撮影/ウィル・エリス(クッション)、リン・アレン 取材・文/須藤敦子〉
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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