• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。保護した子猫のある問題に、咲さんは慌てず対応できました。その理由とは?

    猫のおもらし対策に奮闘

    とんでもないことが起こりました。

    それは、「はしゃしょん」

    八月の終わりに保護した子猫が、はしゃいでテンションが上がると、クッションや布などの上におもらしをしてしまうことが分かったのです。

    最初は、誰が犯人か分からず、母猫が発情期がきたため、スプレー行為の一種かと──だから、手術さえすれば解決するかと思っていたのですが、手術後もおもらしされたクッションはなくならず、ついに現場をおさえました。

    毎日、元気いっぱいで走り回る子猫たち。とってもかわいいのですが、おもらしおしっこは困りもの。その話をブログですると、いろんな方に、ストレスになるでしょう、と心配されたのですが……。

    実は、私も夫も、そんなにショックを受けることはありませんでした。

    なぜなら、もう亡くなってしまった膀胱麻痺を抱える「イレーネ」は、おしっこのコントロールができず、寝ても覚めても、あちこちでおもらし。しかもそのにおいがほかの子よりもずっと濃く、家中、おしっこのにおいになってしまっていたほどです。

    それに比べれば、はしゃしょんのにおいは全然薄い。

    何より、イレーネのおもらし対策で買った洗えるペットシーツが、いまでも何枚も押し入れに眠っていたからです。

    「もう使うこともないよね」と、少しさみしく思っていたペットシーツ。それが、ここにきてまた大活躍し、イレーネが生きていたときのように、おもらし対策に奮闘する日々は、なんだかあの子がまだいるようで、心がぽかぽかとあったまるのです。

    画像: 猫のおもらし対策に奮闘

    ハンデがあっても生きていける世の中に

    はしゃしょんは、もし里親さんを探すとなれば、大きなハンデになるかもしれません。

    でも、一生、我が家の子でいると思えば、個性のひとつ。うまく、はしゃしょんのサインに気づいてトイレに誘導すれば、いつかきっと、上手につきあっていけると考えています。

    私も、心の病気を抱えていたり、できないことが多かったり、いっぱいのハンデ持ち。

    それでも、そんな私をありのままに受け止めてくれる夫や友人、編集さんたちに支えられて、日々を楽しく生きています。

    子猫のはしゃしょんも、そんなふうに無理なくカバーし、これからも元気いっぱい生きてくれればOK。

    「おもらし」は亡くなったイレーネの忘れ形見。

    また、おしっこにわいわい言う日々を、噛みしめて、いつか思い出になる日まで明るく付き合っていきたいと痛感する毎日です。

    画像1: ハンデがあっても生きていける世の中に

    画像2: ハンデがあっても生きていける世の中に

    咲セリ(さき・せり)

    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

    ブログ「ちいさなチカラ」



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