• エッセイストで空間デザイン・ディレクターの広瀬裕子さん。60歳を前に、歳を重ねるなかで出てくるさまざまな課題や考えなくてはいけないこと。たとえば住まいのこと、仕事のこと、⾝体のこと。ひとつひとつにしっかり向き合い、「心地いい」と感じる方へ舵を取る広瀬さんの毎日。そこから、60歳までにこうなりたい、という目標と取り組みを同世代や下の世代の方とシェアしていけたらと思っています。髪とともに、スキンケアを見直した広瀬さん。

    髪の色とともに肌の悩みに向き合う

    50代になると髪の色が変わるとともに、肌の変化に気づきます。書くまでもないですが(自覚しているので)、ハリが消え、シミそばかすが増え、くすみ、シワ、と気になることがいくつかでてきます。いつからか、それらに関する広告がSNSに流れてくるようになり、意識していなくても「そういう年齢になった」のを教えてくれます。

    見た目だけでなく、肌質も変わります。メイクくずれが気になっていた時代は過去になり、乾燥するように。それは、顔だけではなく、体、手、足。とくに寒い季節は、あちこちがカサカサゴワゴワで、以前は気にしていなかったところまで変化は及びます。常日頃「若く見られたいわけではないのです」と言っていますが、歳相応と思いながらも、できれば肌はきれいであれば──と思う自分に気づきます。

    思わぬシミも……暮らしの変化が肌に現れるお年頃

    スキンケア、みなさんは、どうされていますか?

    東京で再び暮らしはじめてから1ヶ月経った頃でしょうか。頬におおきなシミができていることに気づきました。驚いて調べてみると、肝斑(かんぱん)と呼ばれるものでした。原因は「年齢やストレス、ホルモンバランスのくずれ」とあります。引っ越しをはじめ、環境や気持ちの変化、家族の看取りなど、すべてに思い当たることがありました。何より10代から陽焼けをしてきています。比較的、肌が丈夫だったこともあり、手をかけていなかったスキンケアを60歳近くになり見直すことにしました。

    まず、皮膚科へ行きました。肝斑も自分で調べ症状は当てはまっていましたが、病院での見立ても聞いておきたかったからです。結果は「肝斑ですね。結構、広範囲ですね」と、先生。すぐ、ビタミン剤を処方してくれました。いままでは、病院へほとんど行くことなく過ごしてきましたが、これを機に定期的に通うことにしました。

    スキンケアは、毎日の積み重ねです。ただ、ケア用品や方法を増やせばいいというわけでもなく、かと言って足りないとケアになりません。そのあたりの線引きを、暮らしのスタイル、年齢、時間、費用と照らし合わせ、組み立てていけばいいのです。正解がないなかで、スキンケアについて「大切にしていきたいのは何だろう」と再び思いをめぐらすようになりました。

    画像: その日に服用するサプリメントは忘れないように目につくところへ出しておく。皮膚科で処方されたシナール配合は毎食後1錠(上)。SNSを通じて知った漢方薬「艶麗丹」(えんれいたん)は、その日に応じて服用。髪がさらさらに

    その日に服用するサプリメントは忘れないように目につくところへ出しておく。皮膚科で処方されたシナール配合は毎食後1錠(上)。SNSを通じて知った漢方薬「艶麗丹」(えんれいたん)は、その日に応じて服用。髪がさらさらに

    スキンケアでわたしが大切にしたいこと

    大切にしたいと思ったのは「清潔さ」です。使うものは「気持ちが上向きになるもの」。効果も含め、毎朝、毎晩、ケアするたびに、ふわりと気持ちが上がるものにしたいと考えるようになりました。歳を重ねる肌に対し、気になることは日に日に増えていきます。だからこそ「うれしくなるもの」が、これからはちょうどいい気がしました。肌にのせた時の感触、洗いあがり、香り、ボトルのデザイン、使いつづけられるもの。それらのバランスを自分のなかでとりながら、ケアしていくという当たり前のことを思いました。

    「おすすめです」と言われたものを「使ってみよう」という気持ちにもなりました。店頭でサンプルをリクエストする回数も増えています。若いころは躊躇してお願いしづらかったこともできるようになったのは、新しい発見です。

    新商品が次々にでるので使うアイテムが増えがちですが、ある程度、試してみて、違和感を持ったものは手放せばいいのです。いつでも基本に戻れます。自分でつくれるものは作ってもいいですね。

    画像: 以前使っていた「ルブランローション」(シャネル)。香りがよく保湿力も高い(右)、2023年下半期ベストコスメ賞を数多く受賞した「コスメデコルテ」の化粧水「アブソリュートローション」(コーセー)。乳液をつけてから化粧水という流れ

    以前使っていた「ルブランローション」(シャネル)。香りがよく保湿力も高い(右)、2023年下半期ベストコスメ賞を数多く受賞した「コスメデコルテ」の化粧水「アブソリュートローション」(コーセー)。乳液をつけてから化粧水という流れ 

    画像: 「ヤクルト1000」を愛飲していることから、ヤクルトの新しいライン「ラクティフル」を使いはじめることに。独特の香りに乳酸菌らしさを感じる。保湿力もある。注文2回目からは詰め替えタイプになるためちがうボトルを検討中。オイルは全身・髪にも使える「HABA」を愛用中。「スクワランII」は植物性オイル

    「ヤクルト1000」を愛飲していることから、ヤクルトの新しいライン「ラクティフル」を使いはじめることに。独特の香りに乳酸菌らしさを感じる。保湿力もある。注文2回目からは詰め替えタイプになるためちがうボトルを検討中。オイルは全身・髪にも使える「HABA」を愛用中。「スクワランII」は植物性オイル

    もうひとつ。どんな手で自分に触れるか──も、大きいと感じています。

    花を活ける時、花が傷ままないようにそっと触れるようにしています。花にはそんなふうに気を遣うのに、どうしてか自分の肌に触れる時、その気持ちを忘れてしまいます。さっさっさっと。毎朝、毎晩、一瞬、そのことを思い出すことにしました。やさしく触れ、肌とわたしを確認します。

    30代、40代と、肌やスキンケアにもう少し気を配っていれば、いまの肌の状態もちがっていたでしょう。でも、海や山ですごしてきた時間はかけがえのないものです。それに、いまからできることもたくさんあります。60年近く生きていれば、シミもシワもあって当然。

    日々のなかで自分らしい気持ちのいいルーティーンを見つけ、つづけていけたらいいですね。60歳へ向かう自分のために。それは、わたしだけでなく、同年代の人たちも、先を生きる人たちも、ずっとずっと歳下の人たちも。

    60歳までのメモ

    1 肌の状態を見直してみる

    2 いままで使っていたもの、習慣を変えてみる

    3 肌のきれいな友人・知人・専門家に教えてもらう

    4 「いいこと」を増やし「ダメージになること」をやめてみる

    5 睡眠を大切にする


    画像: スキンケアでわたしが大切にしたいこと

    広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)

    エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19



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