(『天然生活』2020年3月号掲載)
お仕立て仕事の合間に、自由な創作で気分転換を。天野さんの夜長仕事
簡単なのに凝って見えるはおりもの
もともとお仕立てでつくっていたデザインを、お裁縫教室の生徒さんのために、より簡単な仕様に改良したという「袖がうれしいストール風のはおりもの」
身頃から腕を通す部分をくりぬく裁断のため、袖付けも簡単。アルパカシャギーの、ふわふわした雪のような白にくるまれます。教室ではあらかじめ裁断した布を使うので、3時間もあれば完成し、そのまま着て帰る生徒さんも多いのだとか。
袖つけ不要で2通りに着られる
名前もユニークな「衿ぐりぐりぐりブラウス」は、衿をぐりぐりと回して、その日の気分でVネックとラウンドネックのどちらかを選べるデザインです。
衿ぐりをステッチで補強し、袖下から脇を袋縫いするだけでほぼベースが完成。
袖つけの必要がないので、気負わず、空いた時間に縫えるのがうれしい。何枚あっても重宝するベーシックな形なので、生地を替えてつくる人も多いとか。
夜9時から午前3時が、自分だけの創作時間
奈良発の老舗ブランド、中川政七商店の商品企画デザイナーなどを経て、2007年より、自身のブランドを立ち上げた天野千鶴さん。
2010年には奈良県の大和郡山に直営ショップ『ミルツル』をオープンし、現在は洋服とテキスタイルのデザインのほか、お仕立てのオーダーを受けたり、お裁縫教室で幅広い世代の女性たちに手づくりの楽しさを伝えています。
プライベートでは3歳の男の子、松重くんのお母さんでもあり、あわただしくも充実した毎日です。
そんな天野さんにとって、家族が寝静まったあと、夜9時から午前3時ごろはかけがえのない自分時間。
お仕立て仕事の合間に、子どものものをつくって気分転換をしたり、作業が一段落したところで、深夜のティータイムを楽しむのも好きだそう。
新作の服やテキスタイルのデザインを考えるのもこの時間帯で、こんな服が着てみたいと、サンプル的につくったアイテムが、のちにお店の定番となることも多いのだとか。
自分のものをつくるときも、お仕立てと同様、きれいに見える袖丈や着丈にこだわり、サイズ合わせを大切にしています。掲載のはおりもののように、1着でいろんな着こなしが楽しめるのも、ミルツルの洋服の素敵なところ。
「ストール風に着たり、前を開けてはおったり、ピンを留める位置を工夫すれば何通りもの表情に。縫うところは少なく、それでいて、着ると凝って見える。そんなデザインを心がけています」
〈撮影/辻本しんこ 取材・文/野崎 泉、鈴木理恵(TRYOUT)〉
天野千鶴(あまの・ちづる)
Milleturu(ミルツル)デザイナー。「着る人によりそう服」をテーマに、オーダーメイドショップとお裁縫教室を運営。
webサイト:https://mille-turu.com/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです