(『天然生活』2022年11月号掲載)
中医学の知恵をほどよく暮らしに取り入れる
中村亮子さんが山登りにはまったのは、いまから10数年前。それまでもレジャーでキャンプに行くなど自然に親しむことはしていましたが、テントを張ったり食事の支度をしたりと、実は何かと忙しい。けれど登山は、山と純粋に向き合い、ひたすらに歩を進める行為です。
肉体的には大変でも、鬱蒼と茂る緑の中で深く呼吸し、自然に抱かれているだけで、それまであった心身の不調がすーっと解消され、じわじわと元気になってくる。「いったいこれは何だろう?そうか、人間もやはり、自然の一部だからなんだ」。そう強く感じるようになったそうです。
友人たちと「岳泉会」という小さな山岳会を結成し、山歩きを続けるとともに、自然療法にも目を向けるようになりました。ハーブを使ったフィトテラピー(植物療法)やアロマテラピーにはまり、パリに旅行に行ったときにはエルボステリア(ハーブ調合薬局)で、どっさりハーブティーを買い込んだことも。
「けれど不調が起こるたびに、わざわざお金を出してハーブやアロマオイルを買うことに、どうもしっくりこない気分を抱えていました。そんなときに、漢方コンサルタントの櫻井大典さんの書籍『まいにち漢方』と出合い、『私が求めていたのは、これだ! 』と、思えたのです」
漢方とは、中国から伝わった中医学をもとに日本で発展した、生活習慣や食養生も含めた伝統医学のこと。人間の体も自然の一部としてとらえ、調子の悪い一部分だけにスポットを当てるのではなく、体全体のバランスを総合的に診る特徴があります。
「ちょい足し」薬膳で毎日無理なく、おいしく
薬膳の勉強をしているものの、食事すべてで実践するのではなく、できる範囲で取り入れているという中村さん。
「秋で乾燥してきたから、喉トラブルが増えたので、かぶやれんこんなど、肺や喉を潤す食材をとろう」「体が冷えてきたので、温めて気血のめぐりをよくする、ねぎや酒粕を食べよう」といった具合。
おいしさを最優先に、ルールを決めすぎず、楽しみながらやるからこそ続くそう。
乾物中心に黒い食材をストックして「腎」をケア
漢方診断をしていると、五臓のうち「腎」が弱いと思い当たることが多いので、「腎によい」とされている黒い食材を意識的に食べるようにしています。
黒い素材とは、黒きくらげ、黒豆、黒ごま、ひじき、黒糖など。主役にはなりにくい食材ですが、サラダや炒めものに混ぜたりしながら、こまめに取り入れるように。
「乾物類はストックもしやすいので、気づいたときに買うようにしています」
和ハーブを使った野草茶で、飲みながらお手軽養生
福岡で「野草の会」に参加している義姉の影響で、飲むようになったという野草茶。
血行をよくするヨモギ、免疫力アップのくまざさ、デトックスにいいすぎな、美肌効果の柿の葉など、まさに日本のハーブティー。
「ヨモギとすぎなをベースにすると飲みやすく、日本人にはどことなくなじみがある味わいに。価格も手ごろなのでたっぷり使え、体調に合わせてブレンドしながら飲んでいます」
<撮影/近藤沙菜 取材・文/田中のり子>
中村亮子(なかむら・りょうこ)
従妹のアラキミカとともに料理創作ユニット「Goma」を結成。「食」「子ども」「ものづくり」をテーマに、書籍や雑誌、webや広告などでのレシピ制作や、商品デザイン、子どもと大人のワークショップ開催など、幅広く活躍。個人では友人たちと山と温泉を愛する山岳会「岳泉会」を結成し、山歩きの楽しさを伝えている。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです