(『天然生活』2022年11月号掲載)
調子を落とさないために小さな習慣をコツコツと
朝9時には夫とともに営む鍼灸院に出勤、午前中に家事をしに一度帰宅、その後は職場で夜8~9時まで漢方相談や患者さんの対応。休日は原稿の執筆や中医学の勉強などに追われ、「完全な休日」は月に1、2日程度という瀬戸佳子さん。
とにかく忙しい日々のなかで心掛けているのは、体の調子を落とさないこと、不調は小さいうちに解消すること。
「鍼灸院にいらっしゃるのは体調が悪い方です。予約は先まで埋まっているので、私たち夫婦が倒れるわけにはいきません。栄養バランス完璧なお手製料理や、豊かな自然の中でリフレッシュできれば一番ですが(笑)、なにせ時間は限られているのが現実です。できない理想を追い求めるのではなく、そこそこの及第点を目指すことが大事。できることで何とか折り合いをつけながら、体調管理を続けています」
毎日の食事にはもちろん薬膳の知恵を取り入れていますが、精神的・肉体的に負担になるような凝ったものはつくりません。
買い物の手間を省くために、食材はすべて、生活クラブや農家さんから直送される宅配で。新鮮な食材がいいのは承知していますが、保存性の高い缶詰や乾物、冷凍食品も積極的に利用。
お菓子やコーヒーといった嗜好品も好きなので、体調に響かないものや時間を選んで摂るようにしています。
鍼灸院では患者さんの体質や症状に合わせた食生活のアドバイスを行っている瀬戸さん。「自分が面倒に思うことは、体調の悪い患者さんはなおさら実践することは不可能だろう」と、最小限の手間で最大の効果を得る方法や、ほどよいさじ加減を、自らの暮らしでも模索しています。
すがすがしい朝に、気功体操
平日は家の中、休日は近所の公園で。毎朝、気功体操を20~30分行うのが瀬戸さんの日課です。普段は家と鍼灸院の往復で、どうしても運動不足になりがち。
仕事が重なるとなかなか気分転換もできず、気が滞る原因になるので、体操で全身の気をめぐらせることを意識します。
「疲れると筋肉が硬くなりやすい体質で。朝一番にきちんと動かしておくと、気のめぐりもよく、疲れにくくなります」
季節の素材は野菜と果物、雑穀でとる
薬膳の基本は旬の食材を食べること。肉や魚で季節感を出すのは難しいので、主に野菜や果物で取り入れます。白米に混ぜて食べる雑穀は、季節によって使い分けを。
「冬から春にかけては血を補い、体力の底上げをしてくれる黒米、夏は熱を取り、水分代謝を促すはと麦や大麦、緑豆を。それ以外の時季はひえ、あわ、きびなどをその日の気分で足して、食物繊維やミネラルを補っています」
肉か魚を毎食必ず食べる
「女性は食事でつい野菜や炭水化物ばかりを気にしがちですが、気血のもととなる肉や魚は本当に大事。私は昼がお肉だったら夜はお魚という具合に、できるだけ多様なものを食べるように心掛けています」
食材の調達は宅配がメインなので、足りなくなったときに使える缶詰や冷凍品、干物などをストックして日々の食事に活用。主菜だけでなく副菜にも追加したりして、食べる総量にも気を配っているそう。
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<撮影/山川修一 取材・文/田中のり子>
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医薬膳師。東京・青山の「源保堂鍼灸院」にて漢方相談を行いながら、「簡単、おいしい、体によい」をモットーに、東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピ提案を行う。雑誌やweb、セミナーなど幅広く活躍。著書『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』『1週間で胃腸が必ずよみがえる 気血スープ』(すべて文化出版局)が好評発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです