(『天然生活』2023年4月号掲載)
月に一度、みんなで集まり、気持ちを分かち合う時間
街中から少しはずれた、線路沿いの一軒家。今年創立40周年を迎える奈良「くるみの木」にはカフェと、雑貨や洋服を扱うショップ、おいしい食材を集めたグローサリーがあります。スタッフは25名ほど、接客からオンライン運営、カフェのキッチンまで仕事はさまざま。
お弁当を食べるタイミングもそれぞれ違います。ふだんは担当する仕事によって順番に休憩をとるそうですが、月に一度だけ、みんなで一緒にお弁当を囲む日があります。それは定休日である、第3水曜日。お店は休みですが、だからこそ、ふだんできない作業に取り組めるそうです。
「この日は、持ち場の違うスタッフが顔を合わせることができる大事な日。午前中は各自仕事し、午後はミーティングや勉強会にあてます。エアコンのフィルター掃除など、なかなか手がまわらないことも一斉に。みんなでやるから捗ります」と、広報担当の藤岡さん。
いつもならランチを楽しむお客さまでいっぱいのカフェですが、月に一度この日に限り、スタッフみんながここでお昼を過ごします。
持ち場を越えて話せて、これからにつながる場
販売担当の中野さんのお弁当にはキンパ。
「巻き寿司が好きでよくつくります。丸々一本で持ってきておにぎりみたいにそのまま食べることもありますね」
野菜もお肉も入ってバランスも抜群、働く人の知恵です。ケーキ担当・藤本さんのお弁当は、フルーツサンド。柿に水切りヨーグルトを合わせて、いちごは豆乳でつくったカスタードと。
「豆乳なら牛乳よりもさっぱりするかなと思って。次のメニューにつながるかもしれないから、試作も兼ねて」と、藤本さん。
みんなの意見も聞けて試すにはうってつけ。お互いにつくり方を尋ねたりして、部署が違ってもたちまち会話が弾みます。「一緒に食べると情報交換ができて楽しいです」と、中野さん。
気持ちを分かち合える、月に一度の、大事な時間です。
「くるみの木」スタッフのお弁当拝見
中野翔子さん
父親が育てた米と十六穀米をブレンド。「『くるみの木』とご縁のある料理家のレシピ本から」、甘辛くした牛肉やたくあんを巻いてキンパに。
山門佑衣さん
玄米ごはんにのせた梅干しは祖母のお手製。里いものコロッケはひき肉をまんなかに包んで。枝豆の玉子焼きや紫キャベツのラペで彩りよく。
藤本奈穂さん
全粒粉のパンを使ってフルーツサンドに。柿のサンドはくるみもはさんで食べるときにはちみつを。ケーキ担当ならでは、見た目もこだわって。
藤原優圭さん
ハムや玉子、キャロットラペなど、好きな具で。クッキングペーパーで包んで切るときれいに。
「父がコックだったのでコツを聞くことも」
「くるみの木」スタッフの1日
敷地内の庭でリネン類の洗濯を。エアコンの掃除などもすませ、すっきりときれいに。ショップ定休日のうち第3水曜は出勤して、お店のリセットの日に。営業日にはできない作業を重点的に行う。
オーナー石村由起子さんが、たくさん頂いたという淡路島「北坂養鶏場」の卵をスタッフに差し入れ。キッチン担当がとろ~り半熟卵に調理して、みんなでシェア。いろんな生産者を知る機会にも。
ケーキ担当の藤本さん、山門さんは、ふだんは朝7時出勤。オープンの11時に間に合うように仕上げ、午後はお店の様子を見ながら補充し、翌日の仕込みも。
「お弁当は、午後からのエネルギーです」
キッチン担当が毎朝やかんにたっぷりお茶をつくり、厨房奥にセット。ふだんはお弁当の時間が一人一人違うので、いつでも自由に飲めるように。
どんなお弁当にも合う、気軽な番茶やほうじ茶を。
藤原さんはオンラインショップやSNSを担当し、接客も。
「店に飾る植物はほとんどが庭で育てたもの。第3水曜はディスプレイを変えたり、棚卸しをしたり。ゆっくり商品と向き合えます」
中野さんがキンパにちょんとのせるのは、グローサリーコーナーで扱うhaleの「こんちゃんマスタード」。
「楽しみながら試して、おいしい食べ方が見つかったら、お客さまにもお伝えします」
<撮影/辻本しんこ 取材・文/宮下亜紀>
くるみの木(くるみのき)
オーナー石村由起子さんが、1983年、奈良で始めたカフェ&雑貨店。奈良町「鹿の舟」、三重・VISON「暮らしの参考室」も人気。創立記念日7月7日からの一年間は40周年の感謝を込めたお楽しみを計画中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです