(『天然生活』2023年4月号掲載)
長野のりんご農家のお昼は、田畑に流れる「村歌」を合図に
中央アルプスと南アルプス、ふたつの雄大な山脈に抱かれる南信州でりんご栽培を行う「善積農園」。
「いくつも食べたくなる、食べるほどに元気になれるりんごを」との想いから、化学肥料不使用、農薬もできるかぎり削減して育てられた完熟りんごの豊かな味わいは、プロの料理家や各地の飲食店からも熱い支持を集めています。
開園は23年前、長く京都に暮らしていた善積純子さんが50歳にして一念発起。長野県へと移り住み、農業大学校での学生生活を経て、たったひとりでりんご園の園主となりました。
その後、息子で現園主の湖戯人(こぎと)さんも家族で移住し栽培に参加。デザイナーでもある妻の峰子さんは広報などを担当し、子どもたちは毎年、家族をモデルに注文カタログの絵を描いて、と家族みんなが役割を担っています。
収穫後の12月下旬からは、発送作業をしながら次の季節の準備を進める「静かに忙しいとき」と純子さん。
「とくに、樹の状態を整える『剪定』は、収穫量にも関わる仕事。じっくり取り組みたい気持ちと、寒いうちに終わらせなければというあせりで、つい夢中になってしまいます」
続ければきりがない畑仕事だからこそ、村内放送のスピーカーから12時に「村歌」が聞こえたら、いさぎよく手を止めて休憩タイムに。お弁当時間を挟むことは、疲労をためず根気よく仕事を続けるコツでもあるようです。
お弁当は仕事の句読点。何気ない会話も栄養のうち
この日、3人が集まったのは、りんご畑の脇の「休憩室」。実はここ、大の車好きである湖戯人さんが購入したキャンピングカー。「車検が通らないから」と破格の値段で譲り受け、農園の憩いの場として大活躍しています。
以前はパートタイムのスタッフも含めておかずの持ち寄りをしていましたが、いまは各家でそれぞれ用意。ひととき仕事を離れ、何気ない会話を楽しむ時間は、体も心もいやす日々の句読点です。
善積さんファミリーのお弁当拝見
善積純子さん
ジャーの保温性を高めるため、汁たっぷりの煮物とスープの「ダブル汁物」が定番。
主食は黒豆入り玄米ごはんに、手製の梅干しを添えて。
善積湖戯人さん・峰子さん
鶏肉レモンソテー、ゆでブロッコリー、さつまいものホットサラダ、にんじんも煮て彩りよく。
「オムレツは日々具を替えて楽しみます」
「善積農園」スタッフの1日
以前近所に暮らしていたクラフト作家の知人から頂いた、お気に入りのかごにお弁当と水筒を入れて。
「暖かい季節はパートさんたちも交えて、外でピクニック風のお昼にすることもあります」
「家族全員、さつまいもが好きすぎて」。さつまいもは自家消費する分を全量栽培しているという善積家。
「りんごとの相性も抜群。今日は生のりんごを小さくカットして散らしてみました」
高所作業車に乗り、真剣なまなざしで剪定作業中の純子さん。
2018年に園主は湖戯人さんへと代替わりしましたが「勉強熱心な母なので、まだまだ教えてもらうことも多いですね」と湖戯人さん。
「もみがら」が緩衝材
りんごの発送作業は倉庫前の作業場で。緩衝材として、お米のもみがらを詰める梱包方法は、開園当時からのアイデア。
「昔を知る人には懐かしく、若い方には新鮮に映るようで好評です」
ハンコもお手製
外仕事で冷えた体を温める保温ジャーのお弁当。
純子さんは「いまも京風の薄味が好み」と、だし汁で炊いた大根に鶏肉、きのこやほうれんそうを加え、日本酒と塩でシンプルに味つけ。
加工品のひとつ「カナちゃんちのりんごジャム」は、彫刻家の経歴をもつ湖戯人さん手製のハンコを押すひと手間を。
「大切なりんごをどんなデザインで届けるかは、悩みであり喜びです」
<撮影/佐々木健太 取材・文/玉木美企子>
善積農園(よしづみ・のうえん)
長野県駒ヶ根市を拠点に、農薬をできるかぎり削減したりんご12品種と米の栽培を行う。無添加のりんごジュースも好評。http://yoshizumi-noen.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです