(『天然生活』2023年4月号掲載)
春の花粉症対策
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
いまや「国民病」といってもいいほど、多くの人をユーウツにさせている花粉症。早い人は1月下旬から反応が始まり、今年は例年以上の花粉の散布を伝えるニュースも聞かれました。
この花粉症、「一度発症したら治らない」といわれますが、適切な養生やケアを行えば、翌年には「薬を手放せるようになった! 」という人も多いのです。そのためには、花粉症が起こるメカニズムと、悪化させる要因は何かをしっかり頭に入れておく必要があります。
その前にひとつ頭にとめておいてほしいのが、近年の傾向として、メンタル面のストレスも花粉症の大きな原因になっているということです。
花粉症が起きてしまう3つの仕組み
ある日突然発症するともいわれる花粉症。そもそも花粉症とは、どのような仕組みで発症するのでしょうか。
1 バリアができない
体には本来、余計なもの、不必要なものが体内に入らないようにバリア機能があります。東洋医学では「衛気(えき)」と呼ばれ、それが働かなくなると、体内にどんどん花粉が入り込んでいきます。
家にたとえるなら、ドアや窓がきちんと閉まらず、すき間から花粉が次から次へと入り込んでいるようなイメージです。
2 デトックスができない
たとえ不必要なものが体内に入っても、速やかに排出できれば大きな不調は起こらないもの。しかしその排出・解毒作用がうまく働かないと、体内にどんどん花粉が蓄積され、症状が悪化します。
その結果、体のめぐりが悪くなり、大便・小便・汗などがスムーズに出ずに、デトックスが正しく行われなくなります。
3 反応が抑えられない
バリアも解毒もできずに入ってきてしまった花粉は、体の中にある「正気(せいき)」(いわゆる免疫力のようなもの)が戦い、体の平安を取り戻そうとします。
この戦いの副産物として鼻水、痰、目のかゆみなどの症状が出ているのですが、正気が足りずに苦戦すると、必要以上にこれら副産物が大量発生してしまうのです。
花粉症を悪化させない基本対策3
発症しても、症状が悪化しなければ生活は格段に楽になります。悪化させないための基本対策をご紹介します。
1 入れない
こういう人はとくにケアを
・体力不足の人
・肌が潤い不足の人
・体が冷えている人
・脳が疲れている人
上記で体を家にたとえましたが、窓やドアに当たるのが、鼻やのど、皮膚や胃腸の粘膜です。粘膜は潤いがあることで、バリア機能を発揮します。そしてそのバリア機能の「衛気」や「正気」をつくり出す原料は食べ物で、「脾」(≒胃腸)が元気であることが何よりも大切です。
胃腸を物理的に冷やさないと同時に、胃腸を冷やす食生活を避けましょう。またマスクをし、のどの乾燥を防ぐことも大切です。
2 ためない
こういう人はとくにケアを
・モヤモヤや不安を抱えている人
・貧血の症状がある人
・便秘がちな人
・生理痛がひどい人
花粉はまず、鼻水やくしゃみで排出されます。それでも出ない花粉は、主に便で排出されます。つまりこの時季はいつも以上に、便秘には注意が必要です。
さらに残った花粉は、「肝」(≒肝臓)で解毒。肝が疲れれば、花粉症は悪化します。肝を疲れさせるものは、アルコールや乳製品、寝不足や過労、ストレスや怒りなどの精神的なダメージ。これらを避けることが花粉をためない秘訣となります。
3 反応させない
こういう人はとくにケアを
・暴飲暴食をしがちな人
・毎日お酒を飲む人
・脂っこいものや甘いものをよく食べる人
・イライラが激しい人
反応させないということは、体の内側のバリア機能が働き、花粉が悪さをするのをしっかり抑えられている状態を指します。
つまり「正気」をつくる胃腸を元気にすると同時に、「正気」の足を引っ張る「痰湿(たんしつ)=体内にたまった余計な湿気」「熱毒=体内にたまった余計な熱」「瘀血(おけつ)=血のドロドロ」をできるだけ減らすことがポイントとなります。
食生活を中心に、生活の見直しが必要です。
<監修/瀬戸佳子(源保堂鍼灸院) イラスト/ヤマグチカヨ 構成・文/田中のり子>
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医薬膳師。国際中医専門員。東京・青山の「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で、漢方相談を行いながら東洋医学に基づいた食養生のアドバイスを行う。雑誌やweb、セミナーの講演などでも幅広く活躍。著書『お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』『気血スープ』(すべて文化出版局)が好評発売中。https://genpoudou.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです