(『暮らしのまんなか』vol.36より)
須長家の暮らしに学ぶ、美しい暮らしのルール
統一感がなくても、子どもが汚してもいい。
すべてを受け入れれば、暮らしの幹がぐんと太くなります
【その1】そろえない
ダイニングまわりの椅子は、すべてバラバラという須長家。さらに、木材の材質や色も同じにする必要はない、と考えているそう。
「色や素材に縛られるより、暮らしのイメージを優先したほうが楽しいと思うんです」と理世さん。椅子は檀さんによるデザイン。右の黒いダイニングチェアは壁にかけられるようになっています。
「ひとつの家具に対してどれだけ場面が想像できるか、というのが長く愛着を持てるコツだと思います」
【その2】隙をつくる
リビング壁面に飾ったのは、長男・絃くんの作品。段ボールや包装紙を貼り付けたあと、燃やして炭にしたものなのだとか。それを見守り、好きなようにやらせてみるのが、檀さんの懐の深さ。
「アーティストの作品にとらわれず、家族の手づくりのものをインテリアに取り入れると、緊張感がほどよくゆるんで居心地のよさがつくれると思います」と理世さん。
「やってみた」という子どもたちの記憶をディスプレイすることができます。
【その3】ピカピカでなくていい
「ブッチャーズテーブル」という名前のダイニングテーブルは、肉屋が使うテーブルをイメージした檀さんのデザイン。分厚いカラマツの天板が特徴。使い込むほどに味わいの増す家具は傷も気にならず、家族で過ごした記憶がそのまま刻まれるよう。
「古いもの、風化したものを暮らしに取り入れると、雰囲気がよくなるし、子どもが汚したり、傷つけたりしても気にならなくなるからラクチンなんです」と理世さん。
【その4】気を抜く場所をつくる
リビングダイニングには、収納家具を置かない代わりに、すべてをまとめてしまえる収納スペースをつくりました。器から電化製品、冷蔵庫までが扉の中に。多少散らかっていても、扉を閉めてしまえば部屋がすっきりと片づくから安心。
このほか、おもちゃや、日用品のしまい場所は寝室代わりの和室に。すべてを完璧にしつらえることなく、こうして「とりあえず突っ込める」場所があると、気持ちもラクになります。
<撮影/有賀 傑 取材・文/一田憲子>
須長 檀、理世(すなが・だん、みちよ)
夫の檀さんは、スウェーデンで活躍してきた経歴を持つ家具デザイナー。障害を持つ人とともに作品を生み出すデザイン工芸アトリエ「コンスト」クリエイティブディレクターでもある。理世さんはテキスタイルデザイナー。現在は「ナチュールテラス」や新たにオープンした店「lagom(ラーゴム)」のディレクターも務める。https://sunagadesign.com/
lagom https://lagom-miyota.com/
NATUR terrace https://natur-karuizawa.com/
福祉+デザインのアトリエ konst https://konst.jp/
<訪ねた人>
一田憲子(いちだ・のりこ)
編集者・ライター。企画から編集、執筆までを手がける『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(共に主婦と生活社)を立ち上げ、取材やイベントなどで、全国を飛び回る日々。著書に『もっと早く言ってよ』(扶桑社)、『すべて話し方次第』(KADOKAWA/3月28日発売予定)ほか多数。サイト「外の音、内の香 」を主宰。https://ichidanoriko.com/
「暮らしのおへそラジオ」を隔週日曜日配信中。
※記事中の情報は『暮らしのまんなかvol.36』本誌掲載時のものです
* * *
一田憲子さんが編集を手がける『暮らしのまんなか』vol.38。暮らしの実例12軒でお見せします。
1章は「自然とつながって暮らす」。いつものキッチンの水道の下に、大きな海がつながっているとしたら……。そんな視点で暮らしを点検したら、洗剤の選び方や、器の洗い方が変わってくるかもしれません。ちょっとした「意識」の変化をきっかけに、自然とつながって暮らすことを選んだ、3人の暮らし方を紹介します。
2章は「私時間を過ごすリビング」。忙しい毎日のなかでは、家事や育児に追われていつの間にか「私自身」が迷子になりがちです。そんなときは、一番多くの時間を過ごすリビングを見直してみませんか? 本をじっくり読んだり、刺しゅうをしたりすれば、大事なものを思い出すことができそうです。
3章は「サステナブル=持続可能な収納」。あれこれ収納グッズをそろえて、部屋を片づけても、1週間もしたら、またごちゃついて……。収納で一番大事なことは、サステナブル=持続可能であるということ。「私でもできること」を見つけ、長持ちする収納システムをつくってきた、5人を取材しました。