(『天然生活』2023年5月号掲載)
都心にある住まいで小さな生態系を楽しむ
大阪の中心部を離れることなく、緑に囲まれた暮らしがしたい。そんな夢をかなえるため、小さなビル一棟を丸ごとリノベーションし、住居として暮らし始めて10年になる平井達也さん・慶子さん夫妻。ルーフバルコニーや屋上など光と風を感じられる空間が3カ所にあり、室内にもハンギングプランツなど緑があふれています。
階段の吹き抜けには見事なコウモリランや、猫のしっぽのようなヒモサボテンが垂れ下がり、あたかもシャンデリアのよう。
持ち運びできる小ぶりな株から、ここまで巨大に育ったそうで驚きです。子株ができてどんどん増えるので、友人におすそわけすることも。
ルーフバルコニーにはナニワイバラやカロライナジャスミンが育ち、朝食を食べながら眺めるのが夫婦の至福のひと時。セミやアシナガバチのほか、毎日のように顔を出すなじみのスズメも。都会のまんなかでありながら、小さな生態系が保たれるようになりました。
ガラスを隔てた日当たりのよいダイニングのテーブルの端っこは、慶子さんの小さな植物実験場。
「リプサリス・エリプティカの弱って落ちてしまった葉がかわいそうなので、ガラスの器に挿して発根待ち中です。根っこを出させるのは、けっこう得意なんですよ」
根が出ると新たな株としてまた育つとのことで、植物を慈しみ、深く愛する気持ちが伝わってきます。
ちなみに室内で緑を楽しむときは、透明なガラスの器が基本とか。
「光が通るから光合成しやすいですし、水の汚れもすぐにわかります。反射するので、部屋が明るく見えますよね」と慶子さん。
また、枝ものや実ものを室内で楽しむ際はあまり手を加えず、素朴な佇まいを大切にしているそう。
「野山に在るがままの姿が、最も美しいと思うから。兵庫に僕らが『山の家』と呼ぶセカンドハウスがあり、周辺で野苺などを摘んできて、自宅や店舗に飾ることも」
都会暮らしでも、庭がなくても、緑と寄り添う暮らしはできる。みずみずしく力強い植物たちが、何よりそのことを物語っていました。
野山にある、そのままの姿を室内でも楽しみたいんです
透明なガラスの器が好き
ガラスを隔ててバルコニー側にもテーブルをつなげることで、ダイニングを広く見せる効果が。
室内側の端には、発根中の植物や採取した種子を。
壁に飾った、植物の絵とも調和
リビングには、お世話が簡単な小さめの緑を。
エアプランツは流木に着生させると元気に育つとわかり、スタンドをうまく活用。
変わらぬ愛情を花にのせて
愛犬の祭壇には花と緑を絶やさない。
この日は近隣のショップ「コティディエンヌ」のアレンジを。
吹き抜けにはコウモリランとヒモサボテンをハンギング。
夏場はバルコニーに出して、日光浴と水浴びを。冬は室内に置き、水は霧吹きで与える。
キッチンにも緑。窓辺にはドルフィンネックレス。
育てているミントは飾ったあと、お茶やサラダに。
インドアグリーンを楽しむための愛用アイテム
ケーキスタンド
「フォブコープ」のケーキスタンドを鉢植えに活用。
脚を上にして、チューリップとムスカリを寄せ植え。自由な発想で、いろんなものが鉢になる。
<撮影/わたなべよしこ 取材・文/野崎 泉 構成/鈴木理恵>
平井達也、平井慶子(ひらい・たつや、けいこ)
1998年より、達也さんが「SI-HIRAI(スーヒライ)」、慶子さんが「si-si-si comfort(スースースーコンフォート)」という2つのブランドを運営。大阪に直営店「SI ET SISISI」がある。著書に『ひとつの型からふたりが作る服。』(文化出版局)。https://www.si-hirai.com/