(『天然生活』2022年5月号掲載)
免疫力を高めるには、朝の過ごし方が大切
私たちの健康を守ってくれる免疫。これは、ウイルスや細菌から体を守る自己防衛システムです。
内科医の工藤孝文先生によると、「免疫には、『自然免疫』と『獲得免疫』の2種類があります。
自然免疫とはもともと体の中にある免疫機能。獲得免疫は、病気にかかったりワクチン接種などで後天的に備わる免疫です。
細菌やウイルスが体内に侵入すると、まずは自然免疫で対抗し、それでは勝てないときに獲得免疫が登場して体を守ってくれます」とのこと。
とくに自然免疫は、日常生活を見直すことでその力を高めることができます。
「免疫力は自律神経の働きが大きく作用します。そのため睡眠、食事、運動の3つが免疫力アップの基本です。ストレスも免疫力を低下させるので、リラックスして心の安定を保つことも大切です」
免疫力向上には一日の始まりである朝の過ごし方が、最も重要になってきます。
「朝は自律神経の切り替えのタイミングなので、朝食で体調を整え、朝から活動的に過ごしたり、心で小さな幸せを感じたりすることで免疫力を高めることができます。さらに朝の過ごし方は夜の睡眠の質にも大きく影響します」
朝のプチ習慣で、病気に負けない心と体をつくりましょう。
朝にやりたい免疫力を高める習慣
朝起きたらまずはうがいから
口の中にはたくさんの細菌やウイルスがありますが、ふだんは殺菌作用のある唾液が洗い流してくれます。しかし、就寝中は唾液の分泌量が少ないため、口の中は細菌やウイルスだらけ。
「起きたら口の中を軽くゆすぎ、それから喉の奥をゆすぎます。こうすることで口の中の細菌やウイルスが喉の奥に流れるのを防げます。就寝中に口呼吸をする人は起きたときに口やのどが渇いているもの。うがいで喉を潤すことで、喉を守る粘膜の働きもよくなります」
お茶に含まれるカテキンは殺菌作用があり、「お茶うがい」もおすすめです。
朝にやりたい免疫力を高める習慣
最強の朝ごはんは、焼き鮭定食
「朝はPFCバランス(*)が整った和食が一番。焼き鮭定食はぴったりですね」
低カロリーで栄養価が高い鮭は、脂肪酸のDHA、EPAが豊富。血圧や血糖値、悪玉コレステロール値を下げたり、がんや糖尿病を予防したりする効果があります。抗酸化作用が高まるので、レモンをつけ合わせるのもおすすめ。
「ごはんに含まれる糖質は、赤血球が酸素を運ぶのに必要です。ごはんの糖質パワーで体中に酸素が十分行きわたり、免疫力が高まります」
野菜は量を食べられる温野菜に、油分の脂質を含むドレッシングをプラスします。
*PFCバランス
タンパク質(Protein)を13〜20%、脂質(Fat)を20〜30%、炭水化物(Carbohydrate)を50〜60%のバランスにすると健康的な食事となる。
朝にやりたい免疫力を高める習慣
朝食はヨーグルトで始め、ヨーグルトで〆る
ヨーグルトに含まれるタンパク質と乳酸菌は、いずれも血糖値の急上昇を抑制し、うつ病や肥満を予防する効果があります。
また、ヨーグルトの乳酸菌やビフィズス菌は、善玉菌として腸内環境を整えて、免疫力を高めてくれます。
ただし、乳酸菌やビフィズス菌は胃酸に弱いため、胃酸が多く出る空腹時や食事の最初に食べると、腸まで届きづらくなってしまいます。
「免疫力を上げる朝食の食べ方としては、ヨーグルトを食前・食後の二段構えで食べるのが理想的。まずヨーグルトを3口食べる『ヨーグルトファースト』で血糖値上昇を抑えます。そのあと、ほかの料理を食べてから最後にもう一度、残りのヨーグルトを食べて腸内環境を整えます」
〈監修/工藤孝文 イラスト/松栄舞子 取材・文/工藤千秋〉
工藤孝文(くどう・たかふみ)
福岡県みやま市の工藤内科院長。福岡大学医学部卒業後、アイルランドとオーストラリアへ留学。現在は同院で地域医療を担うかたわら、テレビ、雑誌などメディアで活躍。専門は糖尿病・甲状腺・高血圧・脂質異常症・肥満症などの生活習慣病、漢方治療など。著書に『ウイルスに負けない親子の免疫力アップ生活術』(主婦と生活社)ほか多数。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです