『わたし時間を取り戻す 暮らしの技術』(だいわ文庫)
24時間の有効な使い方は、暮らしの優先順位から考える
誰もが、時間を有効に遣いたい。だがいつでも、有効な時間を過ごせるかというと、そんなことはない。何もせずに、一日が暮れてしまうことだってある。毎日がそうでは困るが、毎日を有意義に過ごそうと頑張りすぎて燃え尽き症候群となっても困る。
24時間をいかに有効に遣うかは、その人次第だ。 暮らしの優先順位を考慮した時間配分をしていきたい。
例えば私の場合、優先順位は、第一は睡眠と休養で、第二に心身維持のための食とその準備、そして第三が仕事である。
従って一日のうち真っ先に確保するのは8時間以上の睡眠と休養。この時間は、なにをおいても優先させている。最近ではここに、身体をケアする整体通いの時間が加わった。
60代でギックリ腰になり、腰を痛めた。それを治ったと思って放置していたら、どうも右足の腰辺りの筋肉の動きが悪くなり、右足が上手く上がらなくなったのだ。それで、少しの段差でも突っかかり、よく転ぶ。
身体のケアも大切な時間
このままでは転倒をきっかけにして寝たきりになる可能性があるので、整体でほぐしてもらい、動かしてもらう時間が必要不可欠となっている。30分だが、貴重で必要な時間である。これを加えると、8.5時間が第一の睡眠と休養の時間遣いである。
第二の食とその準備には、買い物と食事作りの時間も含まれるが、平均すると一日2.5時間というところだろうか。私は夜が遅い暮らしの習慣になっているため、毎日、三食など食べられない。だから一食は充実させるが、あとは適当である。調理は時間のある時に保存食を作り置きし、あとはその時々の季節に合わせて主菜を作って食べる。買い物はしない日もある。
第三の仕事は、2種類の仕事をしている。午前は、生活研究家としての仕事である。これは主に午前中に3時間程でこなしている。あと1種類は薬剤師としての仕事で、これは仕事場に出かけるので、往復の通勤時間などを含めて6.5時間。
時間は家のことだけに消費せず、自分自身のために
残り時間が3.5時間である。この残りの時間の中に、読書、コーヒータイムの楽しみ、入浴、掃除、片づけなどを、適当に織り込んでいる。新聞と読書にたっぷり1時間、コーヒータイムの楽しみが1時間ほど、あとは入浴で0.5時間、といったところ。
優先順位は、新聞と読書、入浴、コーヒーで、最後が家のことをする時間だ。常に付き合っている人などがいないので付き合いの時間はないが、誘いがあったら読書や家のことに割く時間を省略して、付き合いに消費している。
私が家のことに遣う時間は、平均すると一日0.5時間くらいかもしれない。そのうち掃除は5分、洗濯20分、そして片づけで5分くらい。それほどに、家のことはちょこちょことこなしているということだ。
私はこうして日々、必ず優先順位を決めて時間の配分をして、時間を遣っている。
若い頃の優先順位は、もっと違っていたかと思うが、年齢を重ねた今、家のことだけに消費せずに自分自身に遣う時間が多くなっているのが、お分かりいただけると思う。
自分の優先順位を軸に時間を配分してみると、人生の有効な時間遣いが見えてくるのではないだろうか。
本記事は『わたし時間を取り戻す 暮らしの技術』(だいわ文庫)からの抜粋です
〈イラスト/タカヤユリエ〉
阿部絢子(あべ・あやこ)
1945年、新潟県生まれ。共立薬科大学卒業。薬剤師の資格を持ち、洗剤メーカーに勤務した後、消費生活アドバイザーの経験を生かして、科学的かつ合理的な生活提案をしている。食品の安全性や家事全般の専門家として、テレビ、新聞、雑誌等で幅広く活躍。また、世界各国の家庭にホームステイをしながら、その国の暮らしや環境問題を研究している。主な著書に『キッチンに一冊 食べものくすり箱』(講談社+α文庫)、『「やさしくて小さな暮らし」を自分でつくる』(家の光協会)、『始末な暮らし』(幻冬舎)、『老いのシンプルひとり暮らし』『老いのシンプル節約生活』『わたし時間を取り戻す 暮らしの技術』(大和書房)他多数。