(『天然生活』2021年10月号掲載)
残したいものは次へつないで循環させる
鄭さんがいま心に留めているのは、禅の教え「放下着(ほうげじゃく)」。何もかもを持つことはできないから執着せず手放す精神をいいます。
暮らしに合わなくなったものは手放し、必要とする方に引き継いでもらう。京都で月一度開催される平安蚤の市に出したり、友人に譲ったり、縁のある方へつなぎます。
「いまの私に必要なくても、喜んで手に入れてくださる方がある。平安蚤の市に出店するようになって、ニーズは人それぞれなのだとわかりました。残したいものが循環して、若い人が手仕事のよさを知るきっかけにもなればうれしい。これからは、ひとつ手に入れたら、ひとつ手放す気持ちで」
鄭玲姫さんの収納の工夫
ものを循環させて、ほどよい持ち量に
縁あって手元にやってきたものは、役目を与えて大事に使い、暮らしで必要なくなれば、必要とする人に譲り、捨てずに循環させて。手放すことで、空間もすっきりと。
役目を終えた古いものに活躍の場を
蚕の棚を窓際に立てかけ、昔の灰かき棒、灯明皿など、お気に入りの古道具の飾り棚に。
駄菓子屋さんにありそうな、レトロなガラスびんに茶葉を。
イタリアの蚤の市で手に入れた缶は愛猫クウの餌入れ。白磁の壺の隣にかっこよく収まる。
譲って、譲られて必要な人の元へ
机のそばに竹かごを置いて、書類入れに。
「漆塗り作家の友人がいらないというので分けてもらいました」
店ではお客さまの荷物入れにも。
赤のコーナーのチェストは「お嫁入りコーナー」
いらないと思ったものを引き出しに集めておいて、欲しい人にあげたり、紙類はメッセージカードとして活用したり、行く先をつくる。
頼れる収納アイテム
食品容器だった木箱
昔ほど見かけなくなって、ますます捨てられない、麺類やお菓子などが入っていた木箱。
台所の棚に重ね置いて、いずれ墨汁を塗って収納に活用する。
いろんなフック
籐や鉄など、さまざまな素材、大きさのS字フック。
旅先や蚤の市などで雰囲気のいいものを見つけて、収納に役立てる。手仕事のものと相性抜群。
韓国のポジャギ
ものを包んだり覆ったり、風呂敷のように使われる、ポジャギ。
はぎれをつなぎ合わせてあって、温かみがありながらシンプル。収納の目隠しに。
<撮影/伊藤 信 取材・文/宮下亜紀>
鄭玲姫(チョン・ヨンヒ)
京都にて、李朝喫茶「李青」を1998年創業。主婦としての経験を礎に、体を健やかにする韓国の食文化、手仕事のよさを伝える。2017年、「寺町 李青」開業。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです