(『天然生活』2022年8月号掲載)
地域への影響を考えて、身近なものでシンプルに
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
東京から淡路島に帰郷し、今年でちょうど10年になるどいちなつさん。日々使うものも、できるだけ自然に負担をかけず、ここでよりシンプルに暮らしていくための、もの選びを心がけるようになってきたのだそう。
「生活から出る排水は、できるだけ環境負荷の少ないものにしようと工夫しています」
そんなどいさんがよさを実感しているのは、牛乳の集配所だった古い小屋を改装した際に設置したコンポストトイレ。
電気や水がないところでも設置でき、排泄物は微生物の働きで分解されて庭木の堆肥になり、においもない優れものなのだそう。
移住後は、念願だった田畑を耕し、作物を育てることも暮らしの一部に。野菜やハーブを干すさまも絵になるあめ色に染まったざるは、骨董市やリサイクルショップなどでこつこつ集めた古いものが多いそう。
縁があって使っているものや、譲り受けたものを大切にしつつ、使うものは今後も自然体にしなやかに変化していきたいというどいさん。
「田舎暮らしには不安もあったけれど、近所の方から頂く旬の野菜や果物。こういったものを生産し続ける自然のそばでの暮らしは、私にたくさんの豊かさと気づきを与えてくれます」
繰り返し使うものだから、好きな色を
沖縄在住の作家、kittaの草木染めオーガニックコットンの布を、養蜂家のmajimuがみつろうラップに仕上げたもの。
「kittaは昔からの友人で、どこに住んでいても、心のなかではいつも一緒、そんな存在。この色を見ると彼女らしいな、といつも思うんです。薄手なので、お皿にフィットしやすいのも気に入っています。自然のなかにあるキッチンだから、食品を覆うラップは虫よけにも欠かせません」
引き出しに入れておき、洗いながら繰り返し使うそう。
あめ色に染まった昔ながらのざるを受け継いで使う
キッチンの天井からいくつも吊り下げられた、大小さまざまなざるは、どいさんが田舎暮らしでこつこつと集めてきたもの。
近くのリサイクルショップや骨董市で探したり、解体中のおうちを見かけたときにお声がけして、頂くこともあるのだとか。収穫した植物を運んだり乾燥させるほか、頂いた果物を飾ざるように入れておくことも。
時を経てほのかにあめ色に染まったざるは、愛らしく、昔ながらの道具を大切に受け継いでいくことのよさを教えてくれているのです。
手持ちの器は、金継ぎしながらずっと愛し続ける
欠けた器はダンボール箱にまとめておき、いろいろな仕事が一段落する冬の夜に、友人たちと集まっておしゃべりしながら金継ぎするのが毎年の楽しみ。
細かな工程や仕上がりに、それぞれの性格やセンスが出るのも面白いところなのだそう。
「友人が通っている地元の工房を教えてもらい、1年ほど学びました。かぶれる心配のない、ふぐ印の『新うるし』がお気に入り。もちろん、本物のうるしの方が自然に還るので望ましいのですが、最初のステップとして楽しんでいます」
水資源を浪費せず排泄物を自然に還す
環境負荷を考えて取り入れたコンポストトイレは、どいさんに多くの気づきをもたらしました。
「汲み取り式がにおうのは、大小を一緒にしてしまうからなのだそうです。これだと、2ポケットで大小を分別できるので、においがほとんどありません。大とティッシュペーパーはおがくずとともに微生物によって分解され、土へと還る仕組み。料理教室の生徒さんなど多人数でこのトイレを使っていますが、年1回サラサラの土状になった内容物を取り出しています」
<撮影/森本菜穂子 取材・文/野崎 泉>
どいちなつ
料理家。兵庫県淡路島在住。山麓の休耕田を開墾した田畑で野菜やハーブを栽培し、野山の植物や自然農を学びながら日々料理をする。一年間を通じて料理教室を開催。「心に風」の名前で、自ら育てた「心と体と魂のための植物」を届けている。インスタグラム@windformind
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです