• 暮らしのなかに春夏秋冬の草花、木の実を取り入れて、季節の移ろいをもっと身近に感じてみませんか。花の教室「日々花」を主宰する雨宮ゆかさんのしつらいとエッセイを、写真家の雨宮秀也さんの美しい写真とともにご紹介いたします。今回は、春から初夏にたのしめる草苺〈クサイチゴ〉です。
    (『百実帖』より)

    野で摘む

    最近、野の苺のおいしさに目覚めた。時季が近づくとそわそわしてくる。

    もっとも好きなのは、草苺。大粒でジューシー。家の周りではありふれた植物で、けっこう邪険にしていた。なんともったいないことをしていたのかと反省しきりだ。

    その次は紅葉苺(モミジイチゴ)。旬が短いので、目当ての場所に日参して待ち受ける。だからなのか、味もひとしおに思える。

    素直においしいのもさりながら、「野で摘む」から、夢中になるのだと思う。

    育てるものは、収穫というゴールが見えている。時間も手もかけているぶん、穫るときの充実感はあるけれど、心は落ち着いている。

    採集するものは、ただ穫るだけだ。野で摘んでいると、喜びとも興奮ともつかぬ感情が、身のうちを駆け巡る。労せず、というところがポイントかもしれない。穫ることへの、単純な沸き立つ気持ち。

    味がうすい蛇苺だって摘みたくなるには、そのせいかと思う。

    草苺〈クサイチゴ〉
    春~初夏|バラ科 落葉低木

    かごに草苺〈クサイチゴ〉を生ける

    苺摘みにはかごを持って出かけたい。

    そのイメージを花生けにも取り入れて。

    花材

    草苺(クサイチゴ)/ ビバーナム/芹葉飛燕草(セリバヒエンソウ)

    花器

    ヘーゼルナッツのかご

    ※ 本記事は『百実帖』(エクスナレッジ)からの抜粋です

    〈スタイリング・文/雨宮ゆか 撮影/雨宮英也〉

    ◇ ◇ ◇

    『百実帖』(エクスナレッジ)

    『百実帖』(雨宮ゆか・著、雨宮秀也・写真/エクスナレッジ)

    画像2: 草苺(クサイチゴ)のこと。身近な草花、木の実のたのしみかた「百実帖」雨宮ゆか、雨宮秀也

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    雨宮ゆか(あめみや・ゆか)

    花の教室「日々花」主宰。神奈川県生まれ。季節の草花を生活に取り込む「花の楽しみ方教室」を東京・大田区のアトリエを拠点として全国に発信。工芸作家とコラボした花器の提案をおこない、各地のギャラリーで企画展を催す。花にまつわる執筆やスタイリングなどを手がけ、メディア掲載も多数。 著書に『花ごよみ365日』(誠文堂新光社)、『百花帖』『百葉帖』(ともにエクスナレッジ)がある。

    雨宮英也(あめみや・ひでや)

    写真家。東京都生まれ。梅田正明氏に師事の後独立。食器、家具、住宅など生活にかかわるプロダクトを主に撮影。人の暮らしが伝わる建築写真に定評がある。 近刊に『小さな平屋。』『自然と暮らす家』(ともにエクスナレッジ)など。



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