• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。猫11匹と暮らす咲さんの防災対策を聞きました。

    連休に外出できなかった理由

    実は、今年のゴールデンウィークは一歩も外に出ませんでした。

    その理由は、直前に見つけたSNSでの予言。なんとゴールデンウィーク中に私の住む近畿で大きな地震がおこるというのです。

    不安障害の私は、それだけでパニック。たかが一般の人の予言――それも面白半分に書いただけかもしれないのに、「もし起こったらどうしよう」「私たちはどうなってしまうのだろう」と、こわくてしかたがなくなってしまったのです。

    猫が11匹もいる我が家。

    「地震が起こったらどうするの?」と訊かれることがありますが、私もつねに心配しています。

    今の日本の避難状況を見ていると、おそらく家族全員で避難場所に行くことは不可能でしょう。11匹を受け入れてくれる十分な広さのある環境は期待できませんし、こわがりが多いうちの猫たち。一瞬にして情緒不安定になってしまい、エイズキャリアの子もいるので発症の危険性があります。

    画像: 連休に外出できなかった理由

    地震や災害が起きた時、どうするかを家族で決めている

    そこで私たちが決めていること。

    「避難所には行かない。家で状態が回復するまで自宅避難しよう」ということです。

    幸いにも我が家の周りには、山や川など危ない場所はなく、離島でもありません。そのうえ、あまりこみいった住宅地でもないので、今までの震災や台風の経過を見ていると、おそらく復旧は早いと思うのです。

    そのため、状態が一段落するまで、猫たちと問題なく過ごせる状況を常にキープしています。

    人間の食べ物はなくてもなんとかなるのですが、猫は食べ物がない=愛されていないと不安に思ってしまってはいけないので、猫のごはんは備蓄。

    常にストックを3か月分用意し、ストックのものから食べていっています。

    水は、ミネラルウォーターは猫によくないと聞くのですが、背に腹は代えられません。その間は市販のペットボトルを使ってもらうつもりです。

    また、最悪、どこか家が破損しても危なくないように、実家が工務店の夫が、さまざまな補強道具をそろえています。

    賛否はあるかと思うのですが、私たちはこうして家に引きこもると決めています。

    画像: 地震や災害が起きた時、どうするかを家族で決めている

    人も猫もベストコンディションでいられるように

    もちろん、猫たち全員と避難できる場所があれば、と望まないといえばうそになります。

    ですが、現実問題、それは難しいでしょうし、で、あれば、その中で、なるべく猫が快適でいられるように。

    画像1: 人も猫もベストコンディションでいられるように

    そしてお世話をする私たちも、ベストなコンディションでいられるように、日常から少し気にかけている……といった感じです。

    猫はあたりまえですが、同時に、「心の病」を持つ私も……。

    環境の変化はものすごいストレスになります。

    おそらく避難所での音や声、他者と触れ合わなければならない状況では、私は精神の安定を保つことができないでしょう。

    猫と一緒に、慣れ親しんだ場所で、何より「心」安らかに、非日常になってしまった日常を生きたいと思っています。


    画像2: 人も猫もベストコンディションでいられるように

    咲セリ(さき・せり)

    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

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