(『天然生活』2022年6月号掲載)
洗濯の仕方を見直すところから始めてみましょう
梅雨時の悩み 1
外で干せない
朝は降っていなくても、日中、留守の間に降り出すことも多い。雨が降っている、いないにかかわらず、常に部屋干しでジメジメしてしまう。
梅雨時の悩み 2
洗濯物が乾きにくい
部屋干しでは狭いスペースに大量の洗濯物を干すことになるうえ、室内がジメジメしているせいか、いつまでたっても乾きにくい。
梅雨時の悩み 3
においが心配
部屋干しの悩みで最も多いのが、あのイヤな独特の生乾きのにおい。せっかく乾いたのに、においが気になって洗い直すことも。
梅雨時の悩み 4
室内干しの場所がない
毎日出る大量の洗濯物を干すスペースの確保が大変。リビングの一角に洗濯物が干してあるだけで、うっとおしさ満載で気がめいる……。
梅雨時の悩み 5
汗や泥汚れが落ちない
梅雨どきは蒸し暑く汗をかくうえ、雨で泥跳ねもしやすい。洗濯しても頑固な汚れや汗のにおいがきれいに落ちず、洗い上がりに不満。
梅雨の時季の部屋干しした洗濯物に残りがちな、生臭いイヤなにおい。「実は、そのにおいの原因は、“干し方”以前に“洗い方”の問題です」と教えてくれるのは、ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんです。
「生乾きのにおいのもとは、雑菌の排泄物です。洗濯物に雑菌が残っているということは、きれいに汚れを落としきれていないから。汚れや雑菌の残った洗濯物を部屋干しすることで、さらに雑菌が繁殖。それこそが、部屋干しがくさくなってしまう理由なのです」
とくに梅雨どきは、雑菌にとって最も快適な湿気と温度の条件がそろっているので、①雑菌を残さずきれいに洗濯する、②雑菌が増えないように素早く乾かすという2つが重要です。
「まずは、洗濯の仕方を見直すところから始めてみましょう。ポイントは、洗濯物の量と汚れ具合に合った水と洗剤の量で洗うこと。夏物の洋服は冬物より薄いため重さは軽くなりますが、汗や皮脂汚れは冬の2~3倍にも。しっかり汚れを落とすには、洗濯機が判断した量よりも多くの水量とそれに合った量の洗剤が必要です」
また、皮脂汚れが落ちやすい40℃前後のお湯で洗うのも、汚れをきちんと落とすコツです。
「洗いはお湯がおすすめですが、すすぎは水でもOK。縦型洗濯機では水をためてからのすすぎを2回、ドラム式は注水しながらの2回すすぎが、水量と汚れ落ちのバランスがよく効率的です」
洗濯物を1着ごとにネットに入れて絡まらないようにすることも、汚れを落としやすくします。また、洗濯機周りの環境を整えることも必要です。定期的な洗濯槽の洗浄はもちろん、周囲のほこりや洗濯槽のフィルターのお手入れも欠かさないように。ふだんから換気をよくして洗濯機のある場所の湿気も取り除きます。
干し方を工夫して、できるだけ早く乾かす
洗濯で汚れや雑菌をしっかり落としたら、干し方を工夫して、できるだけ早く乾かします。
「室内干しの最大のネックは、空気が流れないこと。扇風機やサーキュレーターで風をあてると、乾く速度が格段にアップします。できるだけ間隔を開けて干す、なるべく上下が短くなるように干すのもコツです」
部屋干しのストレスを減らすには、乾きやすい素材やサイズを選ぶこともおすすめです。
「タオルケットやシーツなどの大物や厚手のものは、コインランドリーで乾かすのも一案。上手に使い分けて、梅雨の部屋干しストレスを解消してください」
生乾き臭の原因は部屋干しではありません
においのもとは雑菌の排泄物
気温が上がると雑菌も元気に
「生乾きのイヤなにおいは、“雑菌の排泄物”のにおいです」と本橋さん。部屋干しは洗濯物が湿っている時間が長いため、雑菌が繁殖しやすくなります。
加えて、雑菌が最も活発に活動するのは20~30℃と、まさに夏の室温と同じ。その結果、雑菌が好む条件がそろう梅雨から夏は、部屋干し臭が発生しやすくなります。
雑菌の繁殖を抑えることがポイントです。
生乾き臭の原因、雑菌・汚れ・水分を断つ
雑菌を洗い流す
雑菌や汚れをしっかり洗い流すには、洗濯物全体が水につかって、回転したときに1枚1枚が泳ぐくらいのたっぷりとした水量が必要です。
「全自動洗濯機の自動設定では、洗濯物の量に対して、水や洗剤が足りないことがほとんど」(本橋さん)。
汚れをしっかり落とす
においのもととなる雑菌は、洗濯物についた汚れをエサとして繁殖します。洗濯物の汚れがしっかり落ちていれば雑菌が増えることもありません。
いくらきれいに洗ったつもりでも、生乾きのにおいがするなら汚れが落ちていない証拠かも。洗濯の仕方はもちろん、洗濯槽の汚れもきれいにしておきましょう。
素早く水分を断つ
雑菌の繁殖を防ぐには、洗濯物をとにかく早く乾かすことが重要です。外干しでは、直射日光や自然の風が吹いて洗濯物を早く乾かしてくれます。
部屋干しの場合は、部屋の湿度を下げたり、人工的に風を起こしたりすることで、洗濯物の水分をできるだけ早く蒸発させるようにします。
<監修/本橋ひろえ イラスト/須山奈津希 取材・文/工藤千秋>
本橋ひろえ(もとはし・ひろえ)
ナチュラルクリーニング講師。北里大学衛生学部化学科卒業後、化学薬品企業に就職。出産後、専業主婦となるが、自身と子どものアトピー体質をきっかけに、掃除や洗濯、洗剤を科学的に解説するナチュラルクリーニング講座をスタート。著書に『ナチュラルおせんたく大全』(主婦の友社)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです