(『天然生活』2022年8月号掲載)
ナンシー八須さんの「むだを出さずに、楽しむ暮らし」
食卓に茶道の薬缶を。日本文化を道具で楽しむ
日本ならではの道具は、ナンシーさんが日本文化を感じるきっかけにもなっています。ダイニングテーブルの上に、燭台と裂き織りのテーブルランナーと一緒に用意しているのは、茶道用の薬缶。
「一般的な薬缶に比べて、デザインがスッとしてかっこいいと思うんです」
茶道ではなく、夕食時の水差しとして使用しています。
「私は外国人だから、本来の使い方にとらわれず、楽しんでいます」

「銅製の薬缶は、使い込むほどに味が出るところも好きです」
骨董市で見つけることも。古道具と長くつきあう
鍋から包丁、食器まで、台所道具も古いものでそろえています。
「地元の骨董市ではいいものが本当に安く売られているので、昔はよく行きました」

10年選手のせいろと鉄鍋も骨董市で購入。長ねぎや魚を丸々一匹蒸したりプリンをつくったりと出番が多い
心がけているのは、使い終えるたびにすぐ洗うこと。器はすぐに食器棚にしまわず、よく乾かす。鉄鍋は洗ったあとに火にかけて、水けをしっかり飛ばす。
壊れたら自分たちで修繕することも。小さな積み重ねがものを長く使う秘訣なのです。

落ちた拍子に折れた鉄製フライパンの取っ手は、夫が溶接して修繕
役目を終えたベビーベッドは家族のソファに姿を変えて
24歳のときにアメリカのサンフランシスコで買ったというベビーベッド。もともとは、ソファとして代用していたそう。

古い木箱をテーブル代わりに。しっくりなじみ、相性よく調和する
「子どもが生まれたらベビーベッドに、子どもが大きくなったら再びソファにと、家族の成長に合わせて用途を更新しています」
背もたれにクッションを並べて、座り心地を向上。柔軟な発想で家具に新たな役割を与えるのも、ものをすぐに手放さないコツなのかもしれません。
むだを出さないアイデア
冷蔵庫にある野菜をむだなく使いきるための、簡単な工夫を教えていただきました。
いつものサラダにエディブルフラワーを

「食べる楽しみが増えれば、食欲が出るはず」と、料理の彩りを大切にするナンシーさん。ナンシーさんの好物のひとつ、サニーレタスがメインのサラダにも、差し色としてはつか大根と、食用花であるナスタチウムを添えて。
「ナスタチウムを加えるだけで、ぱあっと鮮やかになります。わが家では庭に種から植えて育てました。クレソンみたいなスパイシーな味で、マスタードによく合います」

お皿は夫と子どもたちによる手づくり。「私はデザインが好きで使っているけど、家族の作品だと愛着がわき、食べることがより楽しくなるかもしれませんね」

アメリカのメーカー、ダンスクのサラダボウルは、お母さまの形見
調味料にこだわった八須家の定番ドレッシング
おいしいドレッシングがあれば、食はますます、進みます。八須家で評判なのが、調味料を混ぜるだけの簡単なお手製ビネグレットソース。
おいしさの決め手は、調味料そのものにあります。
「約30年、さまざまな出合いを通じ、自分の舌で確かめながら、本当においしいと思えるものだけを選んできました。重視するのはよい素材を使っているか。おいしいだけでなく、味に力があるかどうかです」

とくにおすすめの調味料は、「富士酢」と「わじまの海塩」。「生産現場を訪問し、ものづくりに真摯に取り組む姿勢に感動しました」
材料とつくり方(つくりやすい分量)
ボウルにオリーブオイル50mL、酢小さじ2、マスタード小さじ1、塩小さじ3/4、粗挽きこしょう小さじ1/8、小さなにんにく(つぶしたもの)2片分を入れ、よく混ぜる
<撮影/有賀 傑>
ナンシー八須(なんしー・はちす)
米国カリフォルニア州出身。スタンフォード大学卒業後、1988年に来日。埼玉県にある築90年の日本家屋で、農業を営む日本人の夫と暮らす。テレビや雑誌を通して、保存食づくりや農家の食生活、生産者を訪ねる様子を紹介している。Netflixの「美味しい料理の4大要素」にも出演。著書に『Japan: The Cookbook』(Phaidon Press)。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです

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