• 服を減らしてクローゼットをすっきりさせたら、自分の本当の姿が見えてきた。大規模なクローゼットの整理に着手し、1000枚の服を手放したファッションエディター・昼田祥子さん。その体験談と、試行錯誤のなかで見出した考え方を伺いました。
    (『天然生活』2024年7月号掲載)

    おしゃれは好き、でも服に執着はしない

    職業はファッション誌をつくって流行を発信するファッションエディター。おしゃれが大好きで、洋服を1000枚以上持っていた時期もありました。そんな昼田祥子さんのクローゼットに現在ある服は、たったの20着です。

    「いまもおしゃれは好き。と同時に、服に執着しなくなりました。たくさんの服に頼らなくても自分は大丈夫という考えに変わったし、本当の意味でおしゃれをする自由を手に入れたんです」

    いまから8年ほど前、ひょんなきっかけでクローゼットの整理に着手し、大量にあった服を手放していった昼田さん。

    葛藤や試行錯誤を繰り返しながらの作業の末に手に入れたのは、すっきりと整ったクローゼットだけではありません。

    自分に必要な服とそうでない服を仕分けるなかで、自分の本当の姿に気づき、心の声に正直に生きられるように。その結果、体の不調も改善し、性格まで変わったというのです。

    「いまはクローゼットを開けるたびに気分がよくてニコニコしちゃう。何度でも見たくなります」

    画像: すっきりと気持ちのよい昼田さんのクローゼット。大好きなシャツとパンツがすぐに目に入るように配置している

    すっきりと気持ちのよい昼田さんのクローゼット。大好きなシャツとパンツがすぐに目に入るように配置している

    服がなくなっても失われない自分のよさって?

    きっかけは、家族のすすめで何気なく始めたフリマアプリへの出品でした。化粧品がすぐに売れたのがうれしくなり、次は靴を出品。ところが、いざ服に着手しようとしたとき、もう着ていない服でさえ手放せないことに気づきます。

    「当時は仕事も生活もうまくいっていなかった時期。そのうえ、服一着すら捨てられない自分がすごく情けなくて。そのときに一大決心をしたんです。ものに振り回されない自分になるって」

    服を手放せないのは自分に自信がなく、手放すと自分の大切な何かが失われてしまいそうで恐いから。そう気づいた昼田さんは、「服がなくなっても失われない自分のよさ」を書き出してみることに。

    「『雰囲気がかっこいい』など、人にいわれてうれしかったことを書き出し、『この服がなくても私のよさは失われない』といい聞かせながら1着ずつ手放していきました。

    それまで自分と深く向き合ったことがなかったので、しんどい作業でしたね。でも進めるうちに少しずつ自信がついてきて、服を多く持たなくても大丈夫だと思えるようになってきたんです」

    画像: 服がなくなっても失われない自分のよさって?

    1000枚の服を手放した昼田さんの選択

    大量の服を持っていた昼田さんは、どのようにしていまのようなクローゼットに整えていったのでしょう。

    試行錯誤しながらの道のりと、そのなかで見いだしていった考え方を聞きました。

    すべての服の役割を決める

    服の1枚ずつに対し「これはこんなとき(シーン)に、こんな使い方(役割)をしたいアイテム」と明確化することで、なんとなく持っているだけの服がなくなります。

    たとえば「週に3日くらい、ふだんの買い物などで使うお手入れが楽なニット」「月に数度、人前に出るときにしか使わないけれど、見るたびにうれしくなるワンピース」など。

    「さらにこれらのなかでどこに一番比重を置きたいかを考え、おしゃれの力の入れどころと抜きどころをつくるのも大事です」

    過去への執着を捨てる

    もう着ないけれど思い出が詰まっているから捨てられない……。そんな服がクローゼットに眠っていませんか。

    「過去に触れることは、服でなくても当時の写真があればできるので、思い切って処分しましょう。その服に触れると、過去の記憶を鮮明に思い出すことができるかもしれませんが、同時に過去を“必要以上に振り返る癖”が抜けず、未来に対して目を向けることができません。大切なのは、未来に対して働きかけられる、いまのこの瞬間なのです」

    自分にとって“不快”な服は手元に置かない

    服はブランドや価格ではなく、自分にとって心地いいかで判断すべき。心地いい服の反対である“不快な”服は潔く手放しましょう。

    「たとえば肌触りがちくちくするパンツ、ポケットがないパンツ、毛玉ができやすいニットなど。これらはあくまで私の場合であって、ひとりひとりにとっての不快があるはず。不快な服を取り除けば、心地いい服だけが残る。自分をていねいに見つめて快・不快のセンサーに従うことで、自分がこうありたいという姿も見えてきます」

    服が減る不安を捨てる

    服を処分するのがなんとなく不安。そう思ったら、その服を手放したと仮定して「その服がない日常には、どんな困ったことが起こりそうか?」と自分に問いかけてみましょう。

    「頭の中にあるままだとイメージしづらいので、実際に書き出してみてください。そのうえで客観視してみると、案外どうでもいいようなことだったりします。私の経験上、考えたことの9割は現実になりません」

    画像1: 服が減る不安を捨てる

    ※『天然生活』2024年7月号、P.39~43「クローゼットの整え方」では、昼田さんの「1000枚の服を手放した選択」をもっと詳しく紹介しています。クローゼット整理の実践方法、昼田さんが服を手放して変わったことなども。ぜひご覧ください。



    〈監修・写真提供/昼田祥子 取材・文/嶌 陽子 イラスト/須山奈津希〉

    画像2: 服が減る不安を捨てる

    昼田祥子(ひるた・さちこ)
    ファッションエディター歴21年。出版社勤務を経てフリーランスに。2016年に大規模なクローゼットの片づけに着手、その体験を綴った著書『1000枚の服を捨てたら、人生がすごい勢いで動き出した話』(講談社)が話題に。2023年からは瞑想インストラクターとしても活動中。
    インスタグラム:@hiru.1010

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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