(『天然生活』2020年7月号掲載)
先人たちの知恵をいかしながら楽しむ、季節の梅仕事
「四季折々、旬の素材を慈しみながら暮らしたいと思っています」という松田美智子さん。
季節を運んでくる果物はそのよい例だそう。木の上でほどよく熟した果実はまさに旬、出盛りともよばれます。
その一番の魅力は、食材のパワーが増すということ。走りのものに比べて、価格が抑えられるのもうれしい点です。
一度に採れすぎてしまうという難題もありますが、それを美味に変えたのが、先人たちの知恵。塩、砂糖、酒などを用いた保存食なのです。
新緑の季節が終わりを告げるころ、野菜売り場に青梅が並び始めます。
梅には、アミグダリンという物質が含まれていて、腸内に届くと猛毒のシアン化水素が発生し、中毒症状を起こします。
ただし、1個に含まれている量は微量。一度に300個食べなければ実害が及ぶことはありませんが、ひと晩水につけてあくを抜き、竹串でへたを取る下処理が必要になります。
まさに梅は、加工品になるために生まれてきた果実といっても過言ではありません。
「毎年つくるのが梅ジュース、梅酒、梅ジャム、カリカリ梅漬けの4種。余裕のあるときには梅干しもつくりますが、ちょっとハードルが高いので、まずはこの4品をつくってみましょう」と松田さん。
まずは、梅ジュ―スのつくり方を教えていただきました。
梅ジュースのつくり方
梅のもつ自然の酸味=クエン酸が、少しずつ糖分の中に溶け出し、時間をかけてさわやかで香り高いジュースになります。
グラスに梅ジュースを1/5ほど注ぎ、漬かった梅の実を入れ、冷えた炭酸水でグラスを満たし、ステア。蒸し暑い日にすっきりと喉を潤してくれます。
材料(つくりやすい分量)
● 青梅 | 1kg+200g |
● 氷砂糖 | 1kg |
つくり方
1 梅はひと晩水につけて、あくを抜く。たっぷりの水分をふくませることで、採れたてのみずみずしい状態にもどる。
2 水けをしっかりとふき取ってから、竹串などで梅のへたをていねいに取り除く。
3 保存瓶に氷砂糖800gと梅1kgを交互に詰める。まず氷砂糖を入れ、梅をひと並べする。これを繰り返し、氷砂糖で終え、冷暗所に置く。
4 梅200g分はジッパー付きの保存袋に入れて冷凍する。
5 3~7日たって氷砂糖が溶け、水分が8分目まで上がったら、冷凍しておいた梅を加える。冷凍梅を足すことで水分が出て、氷砂糖が溶けるのが速くなる。
6 半月後、ほぼ氷砂糖が溶けたところで味見をして、好みで残りの砂糖を加えるかどうかを決める。
氷砂糖が溶ける途中で、発酵した泡が充満してしまうことがある。その場合は、途中、何回か保存瓶の口を開けて、かき混ぜ、ガス抜きをするといい。
7 半年経過した状態。氷砂糖の溶け方、ガスの出方、白濁の仕方や色づきなどは、保存する場所の状態などにより差があるが、透明になり、梅がしわしわになってくれば飲み頃。
〈料理・スタイリング/松田美智子 撮影/川村 隆 取材・文/小松宏子〉
松田美智子(まつだ・みちこ)
日本料理をベースにした家庭料理の教室を1993年より主宰。鎌倉で育った子ども時代から身近だった保存食づくりを基本に、いまの時代に無理なく楽しめる季節の仕事を提案。著書に『別冊天然生活 5つの調理法で大人の料理バイブル100 (扶桑社) amazonで見る 、『65歳からの食事革命 』(文化出版局) amazonで見る など。
インスタグラム:松田美智子@michiko_matsuda/自在道具@jizai_dougu
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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