(『お金の不安をこの先ずーっとなくすために今できる46のこと』より)
年金生活の2つの「後悔」と2つの「誤算」
後悔 その1
もっと貯金しておけばよかった
だよね〜、お金はたくさんある方がいいに決まってるもの。でも、この後悔の真意は、そんな単純なことではないと思います。
「現役中にできるだけお金を使わないで貯めておけばよかった」ではなく、「自分が大して大事だと思わないことに使うくらいなら、そのお金を貯金しておけばよかった」ということなんですね。
お金を何に使ったら、使ってよかったと満足するのか? どういう使い方をしたら幸せな気持ちになれるのか? それを知ってお金を使っていたか、知らずに使っていたか……老後になって手元の預金残高が同じでも、気持ちはずいぶん違うと思いますよ。
後悔 その2
もっと自分の年金を増やせばよかった
老後の生活の支えの大部分は公的年金です。ずっと専業主婦や扶養内だと老後の年金は月6.5万円程度。会社員だった夫と暮らしている間は生活に困ることはないかもしれませんが、離婚したり、夫の他界後、自分が長生きした場合は、自分の年金が少ないと生活に困ります。
年金額を増やすには、扶養から外れて厚生年金に加入するのが近道。でも「四の五の言わずに厚生年金に加入しましょう」ではありません。
厚生年金に加入するために働く時間を増やすことで失うものと、加入して得るものを知ったうえで、自分にとってのベストアンサーを出すことが、後悔を回避することにつながります。
いずれにしても、年金を受給し始めてから「こんなに少ないとは思わなかった」はアウトですからね。
誤算 その1
予想以上に医療費がかかる
今、元気でめったに病院に行かない人は、病院通いが日課になる生活がイメージしづらいかもしれません。一生にかかる医療費のうち約6割は65歳以降に使います。また平均寿命が男性より長い女性の方が、生涯で使う医療費が多くなる傾向も。
現役中の病気やケガは一過性のことが多いので、医療費を変動費に分類する家計が多いです。でも、老後は「完全には治らず、一生つき合い続ける病気」が増えます。
通院と投薬がルーティンになるので医療費が固定費になり、家計を圧迫することに。
後悔 その2
介護保険料が家計の負担になる
出生率を上げようと政府はいろいろやっていますが、超高齢化社会はそう簡単には変わらないし、社会保険料負担が重くなることは予測がつきますよね。年金から天引きされる社会保険料(主に介護保険料)が増えれば、年金の手取り額は減ります。
また介護保険を利用した場合の利用者負担は、一般的には介護サービスにかかった費用の1割ですが、一定以上の所得がある人は2割または3割を負担。
それが近々、2割負担の対象範囲を拡大する流れになっています。つまり介護費用の負担が増えるってことです。
後悔と誤算を避けるために
で、私が言いたいのは、今から節約をして老後のために1円でも多くお金を貯めよう! ではありません。老後の生活のために今の生活がわびしく、つまらないものになるのはイヤです。
ただ取り返しがつかない時期になって「こんなはずじゃなかったのに」の後悔と誤算は避けたい。そのために今できることをやろう! ということです。
<著者/塚越菜々子 イラスト/かなたかなえ>
塚越菜々子(つかごし・ななこ)
1984年生まれ。日本FP協会認定ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)、公的保険アドバイザー(公的保険アドバイザー協会)。税理士事務所に15年間勤務後、2017年に「保険を売らないファイナンシャルプランナー」として独立。現在までに2600人の家計や資産運用のサポートを行う。テレビ、雑誌、webメディアなどのほか、SNSやYouTube FPナナコ【働く女性のお金の教養教室】で情報を発信する。私生活では2児の母。
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YouTube登録者数9.4万人超!相談者目線での家計立て直しのアドバイスが人気のファイナンシャルプランナーによる一生モノのお金の知恵
「年齢の割に貯金が少ない気がする」「老後や子どもの教育費にいくら必要かわからない」…そんな漠然としたお金の不安に悩んでいませんか?
テレビや雑誌で活躍する人気FPで、二児の母親でもある著者が、「貯める」「増やす」「稼ぐ」「使う」「備える」のテーマ別に、「不安」を「安心」に変えるヒントを解説します。