(『天然生活』2021年7月号掲載)
“もったいない”の心を大切に。工夫が楽しい昭和の暮らし
「環境に負荷をかけない、エネルギーを使わない生活を心がけていたら、自然と節約になりました」
そう語るのは、省エネ生活研究家のアズマカナコさんです。洗濯機も掃除機も持たず、5人家族で月々の電気代はたった500円。実践しているのは、電化製品が一般的ではなかった戦後すぐ、昭和20~30年代の暮らしです。
「東日本大震災のあと、冷蔵庫も手放しました。最初は野菜を傷ませてしまうなど失敗もしましたが、いまではすっかり慣れました。食材は少しずつ頻繁に買い、余ったら干し野菜や、ぬか漬けなどの保存食をつくるようにしています」
省エネ生活を始めたのは、環境問題を学んでいた大学時代に登山サークルで泊まった山小屋がきっかけでした。電気も水道も通っていないけれどなんとかなり、工夫することが楽しかったそう。
「大正生まれの祖母の質素な暮らしぶりも思い出しました。昔の人の“もったいない”という心を大切にした生活は、環境にもお財布にもやさしい、理にかなったものだったんですよね」
洗濯するときは、きれいなものから洗って汚れものは最後にすれば洗濯液を使いまわせることや、ガス代のかからないごはんの炊き方など、エネルギーをなるべく使わない家事のやり方を、お年寄りや本から少しずつ学びました。
「干したみかんの皮をたくと蚊除けになることや重曹でつくる歯みがき粉など、試してよかったことを続けています。市販品はパッケージがごみになりますし、知らない成分も入っています。家にあるものを活用するほうが安心です」
〈撮影/山川修一 取材・文/長谷川未緒〉
アズマカナコ(あずま・かなこ)
省エネ生活研究家。東京郊外で、昔ながらの暮らしを参考にしたエネルギーや環境負荷の少ない暮らしを送っている。著書に『電気代500円。贅沢な毎日』など。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです