(『天然生活』2021年9月号掲載)
食器も道具も気軽に使えるものを
グーズベリー、ブラムリーアップル……。日本では珍しい果樹も含め料理に使いたいものを育てている「おいしい庭」からは、豊かな収穫があり、それを特製ソースやジャム、果実酒、乾燥野菜など保存食に加工するのも、このキッチンでの楽しみ。
そんな時間をより心地よくするために藤田さんが工夫したのが、室内にいても外の風景を感じられるように、コンサバトリーのような家にしたこと。
「そもそもこの土地を選んだのも、ヨーロッパの田舎を思わせる風景と気候にひかれたから。そして、庭づくりでも、草も景観になるような自然な庭を目指しています。そんな風景を感じながら料理をしたり、ハーブティーを飲んでひと息ついたりする時間がとても幸せ。とくに、キッチンの窓の外に広がる夕焼けに染まって輝く山のシルエットや、リビング側の窓から見える朝もやに包まれた幻想的な庭の風景は素晴らしいんです」
藤田さんの「私の台所の楽しみ」
四季折々の外の風景を感じながら料理をしたり、ひと休みしたりするのが、藤田さんの幸せな時間。
「おいしい庭」とつながるキッチン
庭との行き来がしやすいのが土間キッチンの魅力。とれたての野菜をじゃぶじゃぶ洗えるように、シンクは理科の実験室のようなものに。
その日のハーブティーでリフレッシュ
ハーブティーのメニューは、その日とれるハーブ次第。この日は、さわやかな風味のレモンマリーゴールド、スペアミント、カモミールで。
台所にいながら外との一体感を楽しめる
キッチンのカウンターテーブルからも庭ごしに塩田平の風景を楽しめる。藤田さんがキッチンの土間側に座り、家族はリビング側から食卓を囲む。
旅先で出合った音楽が疲れを癒やす
テーブルの下には、ヨーロッパを旅したときに購入したというお気に入りのCDがずらり。好きな音楽をかければ庭仕事の疲れも一気に吹っ飛ぶ。
「おいしい庭」の保存食づくり
らっきょう漬け、グーズベリーやサワーチェリーのウォッカ漬けなど、庭の恵みを生かした手仕事も日課のひとつ。毎年楽しみに待つ人たちがいる。
藤田さんの「台所の相棒」
塩田平ノート
「おいしい庭」づくりは進化中。何をどういつ植えていくか、など、メモがぎっしり。自然相手だから、毎年の栽培記録を残すことも大切。
収穫&天日干し用のざる
畑の収穫物をとるときはもちろん、野菜やハーブ、果実の皮など乾燥させて干し野菜やお茶をつくるときも、ざる類は大活躍。
家しごとを支える長靴
庭でも土間キッチンでも藤田さんの足元は長靴。愛用しているのは、息子さんが贈ってくれたという、見た目も履き心地も抜群の長靴。
〈撮影/山田耕司 取材・文/野上郁子(オフィスhana) イラスト/ホリベクミコ〉
藤田みどり(ふじた・みどり)
料理家・画家。神奈川県・北鎌倉と、信州・塩田平に家と庭を持ち、ふたつの家を行き来しながら、庭で育てた食材で、滋味あふれる料理や四季折々の保存食づくりを楽しんでいる。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです