(別冊天然生活『みんなの定番弁当』より)
夏は栄養より安全を。大事なのは、菌類を「つけない」「ふやさない」
「一時期は家族全員の昼のお弁当に加え、夜ごはん用にもつくっていたこともあったんです」と笑う本田明子さん。年代ものの曲げわっぱや、おにぎり用というかごのお弁当箱などを見せてくれました。
「近年の夏はとくに暑くて傷みが心配ですが、学生さんなどお弁当が必須という人もいるはず。でも、きちんと知識をもっていれば必要以上に怖がらなくて大丈夫です」
大事なことは原因となる菌類を、調理道具や手指、お弁当箱を清潔にして「つけない」、水分や温度に気をつけて「ふやさない」工夫をすること。その方法がこれから紹介する7カ条。このちょっとした工夫が安心につながります。
おかずはしっかりと加熱を。揚げものや焼きものは、傷みにくく夏向きだといえます。ただし、この時季に要注意なのは野菜。
水分の多い野菜のおかずは案外傷みやすいもの。気温が30℃を超えるような日は、多少栄養のバランスが悪くても避けたほうが無難です。
「野菜不足に感じるかもしれないけれど、夏は栄養より安全を。野菜は朝晩の食事で補えばいいというくらいの気持ちで。気負いすぎず夏もお弁当を楽しんでください」
夏のお弁当「7カ条」
夏のお弁当づくりの前に知っておいてほしいことを本田明子さんに詳しく教えてもらいました。
ひとつひとつのポイントを気をつけることで、食中毒の心配をぐんと減らせます。
1 だし汁、水分はなるべく使わない
腐敗の一番の要因は水分。故に、だし汁や水は極力使わないおかずづくりを。かつおだしはとくに傷みやすいので要注意。
玉子焼きにはだしを加えずみりんで、煮ものは市販の麺つゆを使うというのも一案。薄口しょうゆは少量で味が決まるのでお弁当向きです。
2 水分は念入りにきる
炒めものや煮ものなど、フライパンや鍋で十分に汁けを飛ばしたと思っていても、意外と水分が残っているものです。
お弁当箱に詰める前に小さなざるなどに移して冷ましながら汁けもしっかりきりましょう。脚付きの小さな金ざるがひとつあると便利です。
3 ゆで野菜にはひと工夫する
すき間埋めのためのゆでブロッコリーはお弁当の定番ですが、この時季はNG。ゆで野菜には水分が多く腐敗の原因となることも。
そこで、油やチーズ、練りごまなどを使って油分でコーティングするか、かつおの削り節やごまなどで水分を吸わせる工夫が必要です。
4 梅やハーブ、香味野菜を活用する
腐敗を防ぐ効果のある梅干しや、しょうが、青じそ、ハーブ類などを上手に使いましょう。日の丸弁当でもいいですが、梅干しを入れて炊いたごはんもおすすめです。
洋風のお弁当なら、ローズマリーやセージ、バジルなどの葉をポンとのせるだけでもいいですよ。
5 極力、手指で直接触れない
でき上がったおかずをお弁当箱に詰めるときなど、つい手でやっていませんか?
きれいに手を洗ったと思っても菌が残っていることがあるため、箸などで詰めることを徹底しましょう。下ごしらえや調理途中も、極力、手指で直接触れないようにしたいですね。
6 しっかり冷ましてからふたをする
暑い時季のお弁当は、ごはんもおかずもしっかり冷ましてからふたをすることが大事。熱いままだと食べるまでに菌が繁殖しやすい一番危ない温度帯が続くことに。
保冷剤や扇風機、うちわなどを使って冷ましましょう。お弁当箱の中に風をあてると早く冷ませます。
7 お弁当箱の隅までしっかり洗う
意外と盲点なのがお弁当箱の洗い残し。とくに隅っこや側面、ふたのパッキンは注意が必要です。また、完全に乾かして水分がまったくない状態にして詰めて。
お子さんの出し忘れや洗い忘れなども考慮し、日々使えるお弁当箱のストックがいくつかあると安心です。
* * *
<料理/本田明子 撮影/山川修一 構成・文/結城 歩>
本田明子(ほんだ・あきこ)
家庭料理家。小林カツ代の助手を20年以上務めたのち独立。つくりやすくおいしい家庭料理を提案する。著書に「昔ながらのおかず」シリーズ(マガジンハウス)など。インスタグラム@honda_akko
※記事中の情報は 『お弁当づくりがラクに、楽しくなる みんなの定番弁当』掲載時のものです