飼うというより、一緒に暮らす感覚で

「しおり」と「てんち」という本にちなんだ2匹の保護猫と暮らす深緑野分さん。

しっかり者のしおりに起こされ1日が始まり、エネルギーの塊のような子猫てんちの“育児”に励む日々を送っています。

しおり
10歳のメス。賢くて責任感の強い学級委員タイプ。「寝る時間に私がまだ仕事をしているとお説教しにきます」。てんちの無邪気さに翻弄されながら、しつけにも奮闘中。

てんち
生後6カ月のメス。多頭飼育崩壊の現場で保護され、深緑家へ。天真爛漫な末っ子気質だが、少し内弁慶でもある。マンガキャラ「ドラルク」のぬいぐるみがお友達。

「てんちは生後3カ月でうちに来て、いま6カ月。一番活発な時期ですね。保護主さんから、すごく元気な子といわれていましたが、想像以上でした」

家じゅうを走りまわり、何にでも興味をもって遊び、しおりに手加減なくプロレスを仕掛けて怒られて。

遊び疲れウトウトしたと思ったらすぐに起きてまた走りまわる……。

そんなてんちにへとへとになりながら、深緑さんとパートナーは根気よくつきあっています。

「てんちはお姉ちゃん（しおり）が大好きで、私たちが相手をしないとシニアのしおりの負担が大きくなってしまうんです。なるべくどちらの子にも我慢をさせたくないし、自由に過ごしてほしい。飼うというより、猫を最優先して一緒に暮らしている感覚ですね」

猫にとって危険がなく、楽しく過ごせる環境を

深緑さんの「猫ファースト」はインテリアにも反映されています。

襖やソファでも自由に爪研ぎをさせ、リビングには猫たちが愛用する段ボールがずらり。

「私も同居人も、見た目とかは全然気にならなくて。猫にとって危険がない環境に整えるのが大前提で、あとは楽しそうにしてくれていたら十分なんです」

● 深緑さんの「猫ファースト」な暮らし

廊下でかくれんぼ。遊びにはとことんつきあう

やんちゃ盛りのてんちは毎日元気いっぱい。パートナーと交代して1日トータルで5時間ほど、しっかり遊ばせます。

「なかなか寝ないので大変ですが、てんちがしおりに絡みにいきすぎないように気をつけています。いまはかくれんぼにハマっていて、廊下の角に私が隠れてちらちら顔を出すと、うれしそうに飛びかかってきます」

猫の「居心地のよい場所」は、なるべくそのままに

猫が好きな場所や行動は、基本的には片づけたり禁止したりしないのが深緑さん流。

「人間の暮らしを押しつけず、なるべく自由にさせたい。猫たちが喜ぶスポットはたくさんつくるようにしています。爪研ぎも専用のものを置いていますが、しおりは襖やソファ、ごみ箱などを使うのが好きなのでそのままさせています」

〈撮影／深緑野分　取材・文／熊坂麻美〉

深緑野分（ふかみどり・のわき）
神奈川県生まれ。小説家。『オーブランの少女』（東京創元社）でデビュー。直木賞にもノミネートされた『ベルリンは晴れているか』（筑摩書房）、『スタッフロール』（文藝春秋）など多くの話題作を執筆。最新刊に『カミサマはそういない』（集英社）。

しおり
10歳のメス。賢くて責任感の強い学級委員タイプ。「寝る時間に私がまだ仕事をしているとお説教しにきます」。てんちの無邪気さに翻弄されながら、しつけにも奮闘中。

てんち
生後6カ月のメス。多頭飼育崩壊の現場で保護され、深緑家へ。天真爛漫な末っ子気質だが、少し内弁慶でもある。マンガキャラ「ドラルク」のぬいぐるみがお友達。

※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです