• お茶を淹れる時間には、心と体をいやしてくれる効果があります。やさしい香りとともに、ほっとひと息。今回は、静岡市葵区で茶屋すずわを営む6代目店主・渥美慶祐さんの、安らぎのお茶時間を拝見します。
    (『天然生活』2022年6月号掲載)

    おいしいお茶=日常の幸せ

    静岡市葵区。全国から銘茶が集まるお茶問屋が軒を連ねるエリアに、「茶屋すずわ」はあります。

    店主の渥美慶祐さんは、江戸時代から続くお茶問屋の6代目。

    自然光が入る「拝見場」で仕入れたお茶のチェックをしています。

    「静岡のお茶は、露地栽培ならではの甘味と渋味が特徴。僕はその渋味が好きなんです」

    そういって淹れてくれた在来種のお茶は、ほのかな渋味が後をひく、やさしい味わいです。

    画像: 渥美さんはお茶問屋の6代目。お茶をもっと日常に取り入れてほしいと2017年、工場の一角にお店を開いた。お茶のほか、茶器などの道具の販売も

    渥美さんはお茶問屋の6代目。お茶をもっと日常に取り入れてほしいと2017年、工場の一角にお店を開いた。お茶のほか、茶器などの道具の販売も

    渥美さんが代々受け継ぐのは、合組(ごうぐみ)という技術。合組とはブレンドのこと。

    単一農園では味わえない、飲んだ瞬間に口に広がる香りと、飲んだあとに残る余韻の長さが、合組の魅力です。

    仕事柄、1日30杯以上、お茶を飲むという渥美さん。朝一番は熱めの煎茶をさっと淹れて、一服。

    「おいしいなあと思ったときは調子がいいとき。お茶の味や香りのチェックは大切な仕事なので、ここで体調を確認します」

    続けて淹れてくれたのは、玄米茶。

    お茶屋さんにとって玄米茶は亜流? と思いきや、鳥取の「丸瀬家」の自然栽培米と静岡県産の緑茶をブレンドした本格派。

    「おいしいお茶を淹れられると、幸せな気持ちになりますよね」と語る渥美さんは、お茶への愛情にあふれていました。

    渥美さん流 「日本茶」の楽しみ方

    お茶を愛してやまない渥美さんに、日本茶の楽しみ方を聞きました。茶菓子の組み合わせ方、茶道具の楽しみ方も真似してみたくなります。

    ペアリングを楽しむ

    友人とのお茶時間に、ペアリングを楽しみます。

    ペアリングの基本は、共通項を見つけること。香ばしいもの同士、フルーティーなもの同士など。

    この日は玄米茶とクランチチョコレート。チョコの風味に玄米の香りでアクセントを。

    画像: 「日用菓子店冬庫」のチョコレートに玄米茶を合わせて。高温で淹れると玄米茶とチョコレートの香りが調和し、ほのかな渋味が残り後味もいいそう

    「日用菓子店冬庫」のチョコレートに玄米茶を合わせて。高温で淹れると玄米茶とチョコレートの香りが調和し、ほのかな渋味が残り後味もいいそう

    画像: 「丸瀬家」のお米の甘い香りがお茶の苦味を包む「RICE&TEA」

    「丸瀬家」のお米の甘い香りがお茶の苦味を包む「RICE&TEA」

    道具を自由に楽しむ

    渥美さんは茶道具好き。店内には急須や茶器が並んでいます。自由に楽しむのが渥美さん流。

    「たとえば、このふた置き。主に煎茶道で使われますが、煎茶を淹れるときにあると便利だなあと思い、購入しました」

    画像: 湯冷ましに使っているのは高田志保さん作の片口、ふた置きは山崎さおりさん作。ねずみがのぞいている愛らしいデザイン

    湯冷ましに使っているのは高田志保さん作の片口、ふた置きは山崎さおりさん作。ねずみがのぞいている愛らしいデザイン

    画像: 深蒸し茶に地元・静岡の「アンカー」の焼き菓子を合わせて

    深蒸し茶に地元・静岡の「アンカー」の焼き菓子を合わせて

    鉄瓶で、しっかり沸かしたお湯で味わう

    鉄瓶で沸かしたお湯には鉄分が含まれ、鉄分とお茶成分のタンニンが結合し、まろやかな味に。

    「お湯の温度によって、苦味・渋味が変化し、80℃を境に、高温で淹れると苦味・渋味が引き立ち、低温で淹れると甘味が強くなります。沸騰したお湯を湯冷ましに移して、湯温を調節します」。

    白湯でもおいしくいただけます。



    〈撮影/川村 隆〉

    渥美慶祐(あつみ・けいすけ)
    静岡県静岡市「茶屋すずわ」店主。創業172年の茶問屋、鈴和商店6代目として茶問屋業を営むかたわら、お茶とお茶まわりの道具を扱う「茶屋すずわ」をオープン。お茶のある暮らしのよさを日々発信している。茶屋すずわ
    インスタグラム:@chayasuzuwa

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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