(『天然生活』2022年6月号掲載)
中国茶の基本の道具
お碗ひとつあれば中国茶は楽しめますが、茶葉のおいしさを手軽に引き出せる道具があればやはり便利で、おもてなしにも役立ちます。
「茶海(ちゃかい)」「茶船(ちゃせん)」といった詩的な名称にも心ひかれます。
茶壺(ちゃふう)
片手で自在に扱えるサイズと重さで、水ぎれのよいものを選ぶのがポイント。使うほどに趣が深まり、道具を育てていく楽しみも味わえる。
茶海(ちゃかい)
お茶の濃さを均等にするためのピッチャー。公道杯ともいう。沸騰した湯を茶海にうつすことで、温度を少し下げる役割を果たすことも。
茶船(ちゃせん)
日本茶にはない独特の道具で、茶壺に湯をかけて温めるときに、こぼれた湯をためておく受け皿。ここに茶杯を入れて、一緒に温めることも。
茶杯(ちゃはい)
日本のおちょこくらいの大きさ。中国茶は香りの変化を楽しむものなので、飲み口が少し外に広がった形状だと、香りをより深く味わえる。
茶則(ちゃそく)
茶葉を茶壺に移す前に、のせておく器。茶壺に入れやすく、茶葉の状態を確かめられるのが利点。竹や磁器などいろんな素材がある。
茶通(ちゃどおし)
茶壺から茶葉の詰まりを取り除いたり、茶葉の偏りを直すときに便利。写真は「佐久間美術」の竹製。「京都小慢」でも取り扱う。
※辰巳さん愛用のやわらかな白が印象的な茶器は佐賀在住の作家、山本亮平さん作。
茶葉の個性が楽しめるおいしい淹れ方
淹れ方そのものはシンプルで簡単ですが、茶葉と湯の温度にはそれぞれ相性があり、お湯の注ぎ方にも茶葉に応じた強弱が。
茶葉の個性を少しずつ学ぶのも楽しみです。
1 ふたを取った茶壺に適量の湯を注いで温めてから、その湯を茶海に捨て、同じ湯で茶杯も温める。
2 茶則を手に取り、茶通しを使って茶壺に適量の茶葉を入れ、まずは1煎目を淹れていく。
3 茶壺に湯を注ぎ、しばらく蒸らす。蒸らす時間や湯の温度は、茶葉の種類によって異なる。
4 お茶の濃さを均等にするため、茶海に最後の一滴まで抽出してから、茶杯に注ぎ分ける。
5 茶通しで注ぎ口に詰まった茶葉を取り除いたり、偏りを直してから、2煎目を淹れていく。15煎くらいまで楽しめる。
〈撮影/わたなべよしこ 取材・文/野崎 泉 構成/鈴木理恵〉
辰巳香織(たつみ・かおり)
美意識あふれる台湾の茶藝館「小慢」の2号店、「京都小慢」の立ち上げから関わり、オーナーの謝小曼さんとともに中国茶の魅力を発信。スタッフとして教室や作家の展示会を運営するほか、飲食店のティーメニュー開発も手がける。
「京都小慢」公式インスタグラム:@xiaoman_kyoto
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです