• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。猫に害になる植物はなんと700以上あると言われています。

    ある日花束を飾っていたら、猫に異変が……

    素敵な家具に、大好きな猫、そして心和む観葉植物やお花――。

    結婚して家を買う時、私はそんな夢を抱いていました。

    ですが、今、我が家の中には植物はひとつもありません。買うことを断念したのです。

    きっかけは、実家の「アル」という猫でした。彼はやんちゃで食いしん坊。そのへんにあるものですぐに遊び、つい口に入れてしまうこともありました。

    もちろん飲みこんでは危ない小さなおもちゃなどは気をつけていました。ですが、私たちは知らなかったのです。普通に身近にある「植物」にも猫に危険なものがあるということを。

    猫に危険な植物とは思わなかった、ある花

    その日、実家にはプレゼントされた花束がありました。色とりどりの春の花たち。母は何げない気持ちで、それを花瓶に挿しました。お花を飾る、ということが特に珍しい家ではなかったのです。

    でも事件は夜、起こりました。アルが突然、何度も嘔吐し、意識も混濁としはじめたのです。

    診療時間外でしたが、すぐに動物病院に連絡しました。花瓶を見ると、花束のチューリップが床に転がっていたので、それを口に入れてしまったのではないかと、そして、それが何か良くなかったのではないかと思ったのです。

    ですが、電話に出た獣医さんは首をかしげました。

    ユリは猫ちゃんに害になりますが、チューリップは聞いたことないですよ」

    そうなのか、と安心しつつも、どっちしにしても体調の悪いアル。夫に連れられ救急の動物病院に駆けつけました。

    アルの症状を見て、獣医さんはすぐに「急性腎不全」になっている可能性があると示唆しました。

    原因は、やっぱりチューリップ。

    猫にとって、ユリだけでなく「ユリ科の植物」はすべて危険で、チューリップもその中に入っているというのです。

    それをきっかけに調べると、猫の体に害になる植物は、なんと700種類近くもありました。

    ユリ科の植物だけでなく、野菜や観葉植物にも注意

    ユリ科の植物はもちろん、ユリ科と同じくらい危ないのは、実は家庭菜園などで気軽に植える野菜たち。ナス、トマト、ジャガイモなど、ベランダなどで育てて、猫が食べては大変です。嘔吐や下痢、ひどい場合だと呼吸困難に陥ることもあるそうです。

    また、飾っている家庭の多い観葉植物にも危険なものがあります。ポトスやアイビーといったとても一般的なものから、モンステラ、カラー、ディフェンバキアなど、おしゃれな家にありそうなものも、まひなど神経症状につながるのです。

    そのことを知ってから、我が家では観葉植物もお花も飾ることを諦めました。殺風景な部屋ですが、その代わりに元気いっぱい走り回る猫たちがいる。

    画像: ユリ科の植物だけでなく、野菜や観葉植物にも注意

    それだけでうちは十分、と思うようになりました。

    お花を贈るときは、その家に猫がいないかもチェックして

    前回お話しした亡くなった猫「ココちゃん」に私はお花を贈りました。私も、うちの猫が亡くなったとき、お花をいただいたのがとても嬉しかったからです。同時に、他に猫ちゃんがいないか、それだけは確認しておきました。

    今、その花はココちゃんの骨壺の近くに飾られ、飼い主である友人の心を慰めてくれているといいます。

    その後、彼は、最近公園に現れる野良さんを家の子にできれば、と考えるようになったそうです。とても嬉しいこと。

    その日が来たら、お花は猫の入らないお部屋に移してもらえるよう伝えておこうと、彼の吉報を心待ちにする毎日です。

    画像1: お花を贈るときは、その家に猫がいないかもチェックして

    画像2: お花を贈るときは、その家に猫がいないかもチェックして

    咲セリ(さき・せり)

    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

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