(『天然生活』2022年7月号掲載)
面白がり同士が集まった新しい家族のかたち
「生みの親」と「育ての娘」など、それぞれで行き来があったそうですが、初めて全員(冒頭の登場人物)がそろったのは、吹奏楽をやっていた長女の発表会で。席は離れているけれど、同じ会場で同じ時を共有していました。
「ゴージャス! 私が考えるゴージャスってこういうことだわ!」
大好きな人たちが集う空間で、ふみこさんはしみじみ思ったのです。
それぞれの娘たちは楽しくつながり、現夫と前夫も、ゆりりんとふみこさんも信頼し合っています。そこにわだかまりは一切なし。「愉快な一族」として親密に連なっているのです。
「別れた夫の家族とつきあわないものなのでしょうね。みんな『面白がり』なところがあるんだと思う。ハタから見たら、ちょっといびつな関係。『だけどなんだか仲良くやっている』というのを、それぞれが誇りに思っているフシがあると思うのです」
困ったら助け合い、誕生日には手紙を送り合い、ときにはみんなで集まって……。それを当たり前とはふみこさんも思っていなくて、「たまたまそういうメンバーだった」といいます。
「一族」とは、実のきょうだいより、近い距離感だと思うそうで、血のつながりだけが人を寄せ合うものではない、と話します。
「最初の結婚を続けていたら、グシャグシャになっていただろうし、こんな面白いことにもなっていなかったと思います。一種類の結婚だけだったら、梓と梢以外の5人の娘たちとは出会えなかった。それはつまらないわ」
人生の目標である「機嫌よく生きる」ためにと、かつて選んだ道は、家族を増やし、イレギュラーで愉快なつながりを生みました。
<撮影/柳原久子 取材・文/鈴木麻子>
山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
随筆家。『家のしごと』(ミシマ社)ほか、著書多数。長年続く、ブログ「ふみ虫、泣き虫、本の虫。」では日々の徒然を愉快に更新。娘の梓さんとのおしゃべりが楽しい「うんたったラジオ」(スポティファイで配信)も好評。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです