• エッセイストで空間デザイン・ディレクターの広瀬裕子さん。60歳を前に、歳を重ねるなかで出てくるさまざまな課題や考えなくてはいけないこと。たとえば住まいのこと、仕事のこと、⾝体のこと。ひとつひとつにしっかり向き合い、「心地いい」と感じる方へ舵を取る広瀬さんの毎日。そこから、60歳までにこうなりたい、という目標と取り組みを同世代や下の世代の方とシェアしていけたらと思っています。食べ方を変えてみたらとてもいい、というお話。

    最近、夕食の食べ方を変えました

    最近「変えてよかった」と思うもののひとつが、食事のいただき方です。夕食時、作ったものをテーブルに一度にならべるのではなく、最初は「おかず」だけにしました。食べ終えたところで「ごはん・お味噌汁・香の物」を用意する。えっ!? と思われる方、いらっしゃいますよね。でも、わたしは、このいただき方が、結構、いえ、かなり、気に入っているのです。

    できたてのおかずと、あたたかいごはん、熱々のお味噌汁を一緒にテーブルに出すには、タイミングが肝心です。わたしが、保温機能のない炊飯方法にしているというのもありますが、タイミングを合わせようとすると頭のなかも、準備も忙しなくなります。

    ある日、別々にいただいたところ、慌ただしさが消えました。「これ、いい」。それから、夜ごはんは、そんな風にいただいています。

    日本料理は、一品一品、順番にでてきます。冷たいものは冷たいうちに、熱いものは熱いうちに箸をつける。そして最後にごはんとお椀。献立は全くちがいますが、流れは近いいただき方です。

    画像: 素材の味がよくわかるように「茹でる、焼く、蒸す」に「基本調味料」がベース。器は吉田直嗣さん。コースターは井藤昌志さん

    素材の味がよくわかるように「茹でる、焼く、蒸す」に「基本調味料」がベース。器は吉田直嗣さん。コースターは井藤昌志さん

    わたしの場合、おかずは一品だけ(時々、変わります)。その時、ノンアルコールビールも。それで、お腹もこころも80%満足します。そのあと、炊きあがり時間を遅めにしたごはんができ、下準備しておいたお味噌汁をあたため、再びテーブルに着きます。

    もちろん、おかずとごはんを同時にいただきたい時は、一緒にテーブルに出しますが、最近はほとんど別々にしています。何より、慌てず作れ、ゆっくり食せる。それがいいのです。

    画像: ごはんのお供は、東山八百伊さんの懐石たくわん。サラダ感覚でいただけるお漬物でストックしています。ごはん茶碗は大谷哲也さん。お椀は赤木明登さん

    ごはんのお供は、東山八百伊さんの懐石たくわん。サラダ感覚でいただけるお漬物でストックしています。ごはん茶碗は大谷哲也さん。お椀は赤木明登さん

    画像: いつも行列の人形町今半さんのお惣菜店は、近くに行った際コロッケを買い求めます

    いつも行列の人形町今半さんのお惣菜店は、近くに行った際コロッケを買い求めます

    食べすぎもなくなりました。ごはんをいただく時は、80%の満足度のあと。それが、食べすぎない理由です。

    こんな風にできるのは、食が細くなったというのが大きいからかもしれません。何人かでテーブルを囲む方には不向きですし、食べ盛り、ハードな仕事の方も、むずかしいですね。わたしはひとり暮らしなので、そういう点は自由です。

    ひとりの食事こそ、自分の「好き」をしっかり楽しむ

    ひとりで食事をすることを「孤食」という言葉で表す時があります。なんとなく「さみしいでしょう?」と勝手に言われている言葉のような気がしてなりません。

    わたしは、食べたいものを自分のタイミングと体調に合わせいただけるので、ひとりの食事がすきなのです。数人で食事をする時は、それはそれでたのしいですし、ひとりの食事もたのしい。時には、映画を見ながらさっと作ったサンドイッチを頬張る。買ってきた折り詰めをいただく。それもすきです。

    そのいただき方、つくり方にしてから、キッチンに立つのがたのしくなりました。一品だけつくればいいという気軽さと、ごはんはあとからのゆったりさ。

    歳を重ねると、多くのことが一度にできなくなってきます。でも、この方法なら、これからも大丈夫。

    60歳までのメモ

    1 食事の方法、回数等、年齢に合うように変えてみる

    2 食が細くなるなかで食べた方がいいものなど調べてみる

    3 食事前にテーブルを整える

    4 片づけも負担がないようにしていく

    5 たのしく、おいしくいただける工夫を忘れない


    画像: ひとりの食事こそ、自分の「好き」をしっかり楽しむ

    広瀬裕子(ひろせ・ゆうこ)

    エッセイスト、設計事務所岡昇平共同代表、other: 代表、空間デザイン・ディレクター。東京、葉山、鎌倉、香川を経て、2023年から再び東京在住。現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどの空間設計のディレクションにも携わる。近著に『50歳からはじまる、新しい暮らし』『55歳、大人のまんなか』(PHP研究所)他多数。インスタグラム:@yukohirose19



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