(『天然生活』2022年9月号掲載)
建築家の想いを日々感じつつ、限られた空間を最大限に生かす
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
妻の知香さんとの結婚を機に、敬愛する建築家・石井修による、自然との共生がテーマの集合住宅「ドムス香里」に暮らし始めて4年目。
建築家が描いた理想や想いを深く体感するため、竣工時の青焼き図面を手に入れ、前の住人が床を塩ビシートにしていたのを当時に倣ってカーペットに張り替えるなど、オリジナルの状態を少しずつ復元することが服部さんのライフワークとなっています。
間口が狭く、奥行きのある現代長屋といったつくりのため、ひとつひとつの空間は比較的、コンパクト。ですが、それぞれの場所に応じて、高さや形状を工夫した家具を自作し、仕事柄もあって増え続ける食器、本、世界中から集めた民芸品などを入る分だけ並べています。
つくり手の顔が思い浮かぶ、思い出や愛着があるものなので、見せる収納が基本だそう。自ら“お盆マニア”というほど、たくさんあるというお盆やトレー類は、専用の棚をつくってまとめることで、すっきり見せる工夫も。
一方、場所をとる家電はほぼ使わず、目をひくのは住民仲間から贈られた「バルミューダ」のオーブンレンジのみ。また、少年時代にボーイスカウトをしていた経験から、ミニマムな道具で工夫することも苦にならないそう。
得意の中華料理をつくる際も、中華鍋ではなく、普段使いのフライパンで腕をふるいます。このメリハリにより、限られた空間を最大限に生かすことができるのです。
ほどほどに整える
棚やラックも、自由な発想で自作
MDFという繊維板を使い、休日に棚やラックを手づくり。空間をむだなく使えるよう、場所に合わせた形状やサイズが基本。
ダイニングの収納はDIYで
家族の書類をしまうチェストは、自作したもの。奥にある本棚も自作で、こじんまりしたダイニングのデッドスペースを活用できる縦長のデザイン。
今後、キッチン内に料理本専用の本棚もつくることができたら、と思案中だそう。
コンクリートブロックと板でオーディオ棚を
レコードやCDが収納でき、プレーヤーも置けるオーディオ棚を、コンクリートブロックと板でDIY。
「子どもたちがまだ幼いので、音楽をゆっくり楽しむのは先になりそう」
右横の子ども用のミニ本棚は、ウルムスツールを。
飾り棚に「好き」を並べて、マイワールドに
書斎のテラスに面したスペースに棚をつくり、趣味のものをディスプレイ。
カメラ、篆刻(てんこく)用の石、メキシコで見つけた民芸品の笛なども。
「最近は息子たちがここにあるものを持ち出すようになってしまい、対策を考え中なんです(笑)」
おかもち型がユニークな、子ども服用ラック
おかもち型のハンガーラックは服部さんがアイデアを形にし、知香さんが内側をブルーに塗った夫婦合作。
今後、弟の蓮君のものもつくる予定とか。
コーナーに設置した、正方形に近い板でつくった棚は、上段にいくほど奥行きを狭くすることで、圧迫感を感じにくいよう工夫。
<撮影/竹田俊吾 取材・文/野崎 泉>
服部滋樹、知香(はっとり・しげき、ちか)
graf 代表、クリエイティブディレクター、デザイナー。1998年に友人たちと地元大阪で「graf」を立ち上げる。 京都芸術大学芸術学部情報デザイン学科教授。大人も子どもも楽しめるプロダクトを紹介する「PLAY TOOL Project」を始動。https://www.graf-d3.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです