(『天然生活』2022年9月号掲載)
「見せたくないものは隠し、見せたいものだけを表に出す」がポイント
最小限のものしかない家は、片づけが必要ないくらいすっきり見えますが……。
「見えているところは、気をつけていますが、見えていないところはざっくり収納なんですよ」
山中さん流片づけのポイントは「見せたくないものは隠し、見せたいものだけを表に出す」こと。そして、部屋の印象は「面」に左右されるから、自分が好きな色や素材で広い面をつくると、自ずと自分らしい空間になるというのです。
棚を白く塗り、カーテンはお気に入りの布をかけ、収納はかごやざるなど天然素材のものを活用し、好みの「面」を家の随所に配し、当座とはいえ、納得のいく空間にしつらえました。
「目に見える範囲の情報を少なくするという意味で、面のほとんどは白で統一しました。色のつくものが目に入るとごちゃごちゃしていると感じるし、散らかって見えるような気がして……」
では、見えていない場所はどんなふうでしょう? たとえば、文房具の入っている引き出しを見せていただくと、かなり大ざっぱ。仕切りのない引き出しに、ハサミや定規がランダムに入っています。
「片づけがマメにできるタイプではないので、細かな収納はしていないんです。適量さえ心がければ、ざっくり入っていても、探す&取り出すのに手間取りません」
ざっくり収納では、ものを入れすぎないことが大事。山中さんは、持ち物のほとんどに「一定量」を心がけています。欲しいものがあれば、いまあるものの見直し。ものとのスタンスが、片づけの楽さにつながっているのです。
ほどほどに整える
かごやざるを上手に活用
「ざっくり収納」派の山中さんの家で大活躍。収納ツールでありながら、インテリアの「素敵」を構成する大事なピース。
布で隠せば、中身はおおざっぱでも
台所の作業台の下に、お気に入りのざるや木箱を置き、食品のストックなどを収納。布で覆っているから、中は多少ごちゃついていてもOK
昔の行李はあると便利
古い行李に衣類を入れて、押し入れの下に収納。
「展示会のディスプレイに使ったり、いろいろな場面で長く使っていけるので、あると便利です」
ふたつきかごは、利用度2倍
勝手口に棚板を取り付け、洗面&掃除道具置き場に。ふたつき竹かごの上下を分けて活用。
石けん、スポンジ、タオルなどはすべて白で統一感を。
ほどほどに整える
よく使うものは色や形をそろえる
何かを並べるときは、ガラス、アルミなど、素材感の同じもので集合させて。
空間にまとまりが出て、不思議とごちゃつき感はなし。
びんに入れ替えればほどよく整う
山中さんが「見せる収納にしてもいいもの」と愛するガラス。色味がないので、たくさん並んでいても圧迫感はなし。
使うびんは、古いものに混じって100円ショップや量販店のものも。素材が合っていれば形がバラバラでもしっくりと。
器は黒と白と染付のみに
大好きな器は、白と黒と藍の染付のみと決めて集めています。
「好きに任せて増やせば、食卓でも収納でも雑多になってしまいます。『これしか買わない』と決めておくと、さまざまな場面で整いやすいです」
軽くて丈夫なアルミを収納にも
鈍い銀色は古い家との相性ぴったり。古い鍋やカップなどを、道具入れなどに活用。
「ガラスにはない気軽さ、丈夫さが気に入っています」
片づいて見える便利なアイテム
シンプルな服のラック
ハリのあるトートバッグ
古い木箱
<撮影/砂原 文 取材・文/鈴木麻子>
山中とみこ(やまなか・とみこ)
布作家/2003年、49歳のときに大人の普段着のレーベル「CHICU+CHICU 5/31」をスタート。現在は、埼玉県所沢市にてギャラリー&ショップ「山中倉庫」を不定期オープンしているほか、全国のギャラリーなどで展示会を開いている。『時を重ねて、自由に暮らす 50代、60代からの衣職住』(エクスナレッジ)などの著書がある。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです