(『天然生活』2022年5月号掲載)
朝の空気のなかで体を目覚めさせていく
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
小高い山の中腹まで100段余りの石段を上った先に立ち、眼下に相模湾を望む藤井まりさん宅。ここでの一日は、日の出とともに始まります。
コロナ禍以前は、料理講習のため国内外各地へ頻繁に出向いていた活発な藤井さんですが、年齢に伴う体の変化にも感じるところがあるそう。
近頃は、目覚めてすぐには布団から出ず、10年ほど前に傷めた膝をいたわるように、10cmほど足を上下させる運動をしゆるやかに始動します。
身支度を整えたら山を下り、40分ほど海辺を散歩。春以降は霞がかかる日が多いため、「富士山が見えた朝はラッキー、と思うの」と笑う藤井さん。取材当日は、さわやかな青空を背景に、真っ白に輝く富士山の雄姿に恵まれました。
ほんのり汗ばむほどの散歩を終えたら、葛練りにしたまろやかな甘酒でひと息。そして仏前に手を合わせ、お経を読みます。
2006年、藤井さんが「和尚」と呼ぶ夫の宗哲師が亡くなって以来、欠かさず行ってきた日課です。正座をし、張りのある声で唱える般若心経にはよどみがありません。
禅に学ぶ、朝と食の習慣
海辺まで散歩する
早起きして徐々に体を動かし、外気に触れ、一日を健やかにスタートする藤井さん。季節を体で感じる時間でもあります。
「若いころはワンダーフォーゲルなんてやっていたから、いまも体を動かさないと落ち着かなくて」と笑う藤井さんは、天気のよい朝には、40分ほどかけて近くの海辺まで散歩する。
南風で砂浜に打ち上げられるわかめは、この辺りの春の風物詩。暖かい季節には霞のかかる朝が多いものの、この日は晴れ渡った空に富士山がくっきり。
禅に学ぶ、朝と食の習慣
一日の始まりに甘酒を
一杯の水のあと、一日の初めに口にするのは甘酒。2、3日おきにつくって常備しているものを、葛粉とともになめらかに練る。
発酵食の甘酒、葛粉、しょうがの取り合わせで、じんわりとしたぬくもりがおなかから広がる。
「甘酒の葛とじ」のつくり方
材料とつくり方(2人分)
1 甘酒をつくる。もち米1/2合と赤米・黒米(合わせて)小さじ1を合わせてとぎ、米の3倍(285mL)の水とともに土鍋に入れて30分おく。強火にかけ、沸騰したら底から大きく混ぜ、ふたをして弱火で2〜3分炊く。火を止めて10分以上蒸らす。
2 米麴1/2カップを加えて混ぜ、ヨーグルトメーカーに入れて7時間おく。ミキサーで攪拌してなめらかにする(保存容器に入れて冷蔵庫で4、5日間保存可能)。
3 葛粉20g、水1/2カップを鍋に入れてよく溶いてから、2の甘酒を加え、木べらなどで練りながら中火にかける。透明感が出てとろみがついたら、しょうがのすりおろし小さじ1を加えて混ぜ、火を止める。
4 器に盛ったら、好みで豆乳大さじ2〜3をかける。
<料理/藤井まり 撮影/山田耕司 構成・文/保田さえ子>
藤井まり(ふじい・まり)
精進料理教室「鎌倉不識庵(ふしきあん)」主宰。夫である故・藤井宗哲(そうてつ)とともに精進料理の指導を始めて40年。自宅での教室のほか、国内外各地へ赴き、講師を務める。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです