築84年の家にハーブガーデン。
「培ってきたもの」を生かして信じる道を進むのみ
「85歳になる夫は6年前にアルツハイマー型認知症を発症しました。現在は要介護4の状態です。お医者さんにも周りの人にも『そろそろ施設に預けたら?』って言われますけど、できる限りそれはしたくない。私の手料理を食べさせてあげたい。夫の両親が建ててくれたこの家で、できる限り過ごさせてあげたい。ショートステイやデイサービスの皆さんや義理の妹たちに助けられながら、なんとか自宅で介護を続けています」
吉山武子さんは商家に育ち、結婚後は夫の家業の手伝いと家事、育児に奮闘。子育てが終わる頃スパイスに出合い、夫の協力のもと、その魅力を伝える仕事を始めることができました。
夫はいちばんの理解者であり、人生の戦友なのです。
「料理の勉強に東京まで行ったこともあります。スパイスやハーブのほかにも、美しいものや料理のアイデアなど、いろんなことを吸収しては、皆さんにおすそ分けしたり、お伝えする。無我夢中だったけれど、本当に楽しくて、充実していました。今は夫の介護が暮らしの中心。そのためには私が倒れるわけにはいきません。お互いの健康が優先事項です」
食生活は命の基本!
食べることが大好きな夫のため、自分のため
「料理も介護も、愛情がなくちゃできないこと」スパイスやハーブをいかに日本の暮らしに取り入れるか、長年研究を続けてきた吉山さんの食生活には工夫がいっぱい。
高級な食材は使わなくても、安心安全で体によいものを。そのためにはお金も研究する努力も惜しみません。
二の次になりがちな自分のこと。ハーブやスパイスで健康維持
在宅介護で大切なことは、介護する人が健康であること。
「せっかく学んだハーブやスパイスの知識を生かして、心身をケアします。腰や歯など、医療の力が必要なことは受診して治しますが、基本は日々の暮らしで健康維持!」
庭で育てているハーブたちが大活躍しています。
庭のハーブを日々活用! ハーブティーや体ふきに
カフェインが入っていないため、寝る前にも飲めるのがハーブティー※のよいところ。
その日の体調に合わせてハーブを選びます。昼間はミントやレモングラスで体を活性化。風邪をひきそうなときはジャーマンカモミールとタイム。
毎朝、進夫さんの体をふくときはローズマリーを浸したお湯を用意します。
※体が弱っているときは薄めにしたほうがよいそうです
本記事は『老けないあの人の素敵な年の重ね方』(扶桑社)からの抜粋です
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暮らしと気持ちの“ちょっとした工夫”で年を重ねるのが楽しくなる!
いつ会っても変わらぬ笑顔、元気で若々しい雰囲気。お気に入りの洋服やインテリアに囲まれて自分のペースで暮らしを楽しんでいる。そんな素敵な年の重ね方ができたら......。世の中のありようや暮らし方は、これからもっと多様になっていくはずですが、どんなときでも、自分らしいスタンスで毎日を大切に、丁寧に楽しんでいきたい。そんなふうに感じている方に向けて。素敵な先輩方の暮らしぶりに、そのヒントを探したり、老けないためのテクニックを身につけたり。この1冊が、あなたが自分らしく、素敵に年を重ねるための強い味方になるかもしれません。
吉山武子(よしやま・たけこ)
スパイスブレンダー、スパイス料理研究家。40歳の頃、スパイスカレーに出合い、本格的にスパイスやハーブを学ぶ。73歳のとき、久留米市内に店舗「TAKECO 1982」を開店。主宰として携わる。