(『天然生活』2021年6月号掲載)
めざすのは“なんでもない”普段着のようなパン

右から、パンの梱包や発送を担当する中村亮子さん、パンとチャイの店の開業をめざす研修生の白井康平さん、田村さん、春から大学院生でパンを勉強中の岡本隼輔さん
今年、縁あって岡山の蒜山(ひるぜん)に家族とともに暮らしの拠点を移すという田村さん。薪窯を新たにつくり、パンづくりは広島の工房と2拠点で行うことになる予定とか。
「親しくしている蒜山耕藝さんの指導で、ついに小麦の栽培もすることになりました。畑付きの物件だったので、自然な流れで、もうやるしかないなあって」

基本の4種類。丸いカンパーニュが大小、楕円形と型焼きのブロン、中央下のブリオッシュのほか、定期購入者には右上のライ麦パンを入れることも。広島名産の生牡蠣とも相性がよく、白ワインがすすむそう
ちなみに、「ドリアン」という店名はかつて庭にドリアンの木があったことに由来するそうですが、のちにフランス語で「De rien(どういたしまして)」という意味もあることがわかったそう。
「『ありがとう』と感謝されたことに対して、『なんでもないですよ』と返す言葉だから、店名にすると“なんてことないパン屋”という意味に。フランス人に『どう思う?』と聞いたら、日本人ぽく謙遜しているイメージで『悪くない』っていってくれました」

窯から出したパンはラックで冷ます

ブロンの型焼き。そのままでも、バターをつけてもおいしい
なんでもないというのは、国内で育てられた麦で普通に焼くことができて、現代の食生活にもマッチし、一時の流行ではなく飽きずに食べられる、そんな“普段着のパン”であること。
フードロス削減という視点から注目されることが多いドリアンですが、今後は成熟期に入った私たちのパン食を、日本に根付いた文化として、より骨太なものにする役割も担っていきそうです。

ブーランジェリー・ドリアン
広島県広島市南区堀越2-8-22
※現在、店舗販売休業中。ネット販売のみ。
※お問い合わせ先:✉derien_info@me.com
https://derien.jp/
<撮影/森本菜穂子 取材・文/野崎 泉>