(『天然生活』2023年10月号掲載)
静かに自分と向き合い、明日への活力を養う
宅配レストラン「桃花源」を切り盛りしている伊藤千桃さん。豊かな自然に恵まれた神奈川県葉山町の山の麓で、太陽の動きに合わせて暮らしています。
「夜明けとともに鳥がにぎやかにさえずりはじめ、自然と目が覚めます。そして、日が沈むと真っ暗になり、静寂に包まれながら眠りにつきます。自然の流れにあらがわず、昼間は活動し、夜は休む。動物と同じですね。とてもシンプルに暮らしてきました」
伊藤さんにとって、夜は活力を養うための休息の時間。夕刻には入浴と晩ごはんを済ませ、日没後は夜空を見たり、ストレッチをしたりして、ゆったりと過ごす――。この習慣は20年以上前から変わっていないといいます。
「いまは2階に娘と孫が住んでいますが、子どもたちが巣立ったあとの10年間、ひとり暮らしをしていました。その10年間で自分の時間を自分のために使う、夜の過ごし方が定まったと思います」
そして、伊藤さんが夜の時間を心地よく過ごすために欠かせないのが、シルクのパジャマ。蒸し暑い日は熱を逃し、肌寒い日は冷えから体を守る。旅行に持っていくほどのお気に入りだとか。
「育ての親が寝間着にこだわる人で、若いころから上質なシルクのパジャマやガウンを着て夜を過ごしていました。肌触りが本当に心地よく、ふんわりとやさしく体を覆うので、安心感に包まれます。だから、これを着ると、頭が睡眠モードに切り替わって心身ともにリラックスできます」
夜のひとり時間が精神的な豊かさに繋がる
「どんなに疲れていても、ベッドにバタンキューと寝落ちしてしまわないよう、夕暮れ時から眠りに向けた夜の準備を始めるようになりました。
そして、就寝前は、ひとり静かに本を読んで過ごし、自分の内面を見つめ直すことに費やしています。家族と過ごす時間も大切ですが、自分と向き合う時間も必要ですから」
伊藤さんが、常に心がけているのは“歳をとっても、家族がいても、自立して暮らすこと”。
「家族と同居していても、べったり一緒に過ごさないようにしています。一緒にいることが当たり前になると、年寄りはついつい家族に甘えてしまって、次第に依存するようになる気がするからです。
だから、基本的に私の食事は娘たちとは別にしていて、夜は、自分がやりたいことをして“ひとり時間”を楽しんでいます。だからこそ、家族ともちょうどいい距離感を保ち、生き生きと暮らせているんだと思います」
特別な夜の習慣
気分が高まってなかなか寝つけない夜は、少しだけ夜更かし。ネイルをケアしたり、夜空を眺めたり、優雅なひと時を過ごします。
疲れた日はお気に入りの椅子でゆったり過ごす
頭の疲れが取れなかったり、目がさえて寝つけない日は、窓際の椅子に座って、ほっとひと息。
「眠れないときは無理に寝ようとせずに、窓際のソファに座り夜空を眺めています。くつろいでいると、必ずジゲン(愛犬)がやってきて、膝の上にあごをのせて、先に寝てしまうんです。その寝顔を見たら、なんだか私も眠たくなります」
お出かけの前日にマニキュアを塗る
お出かけの前夜は、庭仕事で汚れた爪をケア。
「泥んこになって草むしりをするので、爪が黒ずむんです。だから、外出の前夜には、マニキュアを塗って隠すようにしています。用事を終わらせ、心を落ち着かせてから塗るときれいに仕上がります」
翌日に着る服の色味と合わせて。昔から深い赤が好きで、赤ばかりが減っていくそう。
〈撮影/小禄慎一郎 取材・文/坂口みずき〉
伊藤千桃(いとう・ちもも)
1950年ジャカルタ生まれ、1972年度ミス日本、元女優。結婚後、子育てのために葉山に移り住む。離婚後は「桃花源」の屋号でレストランを営み、旬の地野菜を使った料理で人気に。現在はデリバリーや民泊などを行う。著書に『千桃流・暮らしの知恵』(主婦の友社)。庭の薬草をブレンドした自家製のお茶を販売中。https://chimomo.official.ec/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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