(『天然生活』2023年10月号掲載)
一日の終わりはゆっくり好きなことをする
自宅で料理教室を開く、麻育子さん。ていねいにひいただしや調味料にこだわって、季節を感じる料理を提案しています。キッチンの調理台はゆったりと広く、レッスンにぴったりです。
「家をつくるとき、夫に“こんな大きな調理台で何をするの?”っていわれて。そのとき、初めて“いつか料理教室をやってみたい”て思いを口にしたんです」
本格始動したのはそれから10年後、50歳を迎えてからでした。
「結婚後は仕事をしていなかったし、レストランで働いた経験もなかったので、なかなか一歩を踏み出せずにいたんです。
あるとき、友人が『料理の才能があるんだから、やってみればいい。だけど、やるからにはプロとして、いままで以上にしっかり勉強して道を極める覚悟でね』って、背中を押してくれて、決心がつきました」
いまでは京都、大阪、東京など遠方から通う人もたくさん。フランスで和食レッスンをする夢も叶え、活躍の場が広がっています。
もともと友人を招くのが夫婦そろって好きで、わいわい食べて飲むのが、夜時間の何よりの楽しみ。友人と一緒に料理することもあれば、調理台をカウンターにして一品つまみながら飲むことも。
「コロナ禍ではなかなか難しかったですけど、やっぱりみんなで集まると、元気がもらえますね」
夫婦ふたりで過ごす夜も、ほとんどの時間をここで。明日のために、包丁を研いだり、豆をコトコト煮たり、ゆっくりと過ごします。
人生を豊かにする学びの時間をもつ
「夜は、一日が終わっていく時間。用事を済ませたら、自分の好きなことをして、穏やかに過ごします」
学生時代から語学が好きで、40歳を前にして始めたのが、フランス語のレッスン。以前、京都で教えてもらっていた先生がアイルランドに移住し、いまはオンラインで。
最近、本をきっかけにハーブに興味をもち、著者である植物療法士・鈴木七重さんからもオンライン講座で学んだそう。以来、日常に欠かせなくなりました。
「以前はハーブティーがちょっと苦手だったんですけど、レッスンで試したらすごくおいしくて」
体調や気分に合わせてブレンドし、眠る前と朝に飲むのが習慣に。精油で化粧水やマッサージオイルも手づくりしています。
「自分の体質に合う、確かな品質のものでつくれるから安心。つくっている時間も幸せですね」
学ぶことで、仕事も、日常もいっそう豊かに。そうしてゆっくりと一日の終わりを過ごし、明日も、これからの人生も、楽しみに。
特別な夜の習慣
好みのものにできるのが、手づくりのよさ。自分のためにゆっくりとひと手間かけてつくる時間も、麻さんの喜びです。
豆をコトコト煮ると心が落ち着く
豆が大好きで、いろんな種類を常備。夜、水にひたしてもどします。それぞれ大きさが違うので、混ぜて使うときも種類ごとに。
コトコトゆでる時間もお気に入りです。ひたし豆にしたり、シロップに漬けたり、つくりおきにも重宝。
「久しぶりに豆をもどして、最近、ゆとりがなか ったんだなって気づくことも。私にとって、生活のバロメーターですね」
精油でマッサージオイルをつくっておく
天然のアロマオイルをブレンドして、マッサージオイルをつくり、お風呂上がりに使います。
アルガンオイルをベースに、好んで使うのはローズやゼラニウム、サイプレス、ラベンダー。
「疲れた日や時間があるときは、リンパマッサージをして体をほぐします。自分の好きなアロマだから、香りをかぐだけで幸せ。つくっているときも楽しいです」
〈撮影/辻本しんこ 取材・文/宮下亜紀〉
麻 育子(あさ・いくこ)
料理家。滋賀県大津市にて「料理教室 麻 L'atelier culinaire ASA」主宰。京都にて食べることが好きな家族に囲まれて育ち、とりわけ味付けや盛りつけに厳しい父の影響を受ける。展覧会やオープニングパーティのケータリング、フランスで和食教室を開講するなど、食を軸に活躍。https://ikukoasa.com インスタグラム@asaikuko
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
天然生活2024年10月号では「私が整う夜時間」を特集しています。
「今日のやらなければいけないことを片づけ、心と体をほぐす、いやしの夜時間。
新しい明日を迎えるために、まずはまっさらな自分へとリセットを」
ぜひご覧いただけましたら幸いです。
天然生活 2024年10月号
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