Q: 何でもないときに大量に汗が。これは「プレ更年期」というものでしょうか
汗のかき方が昔と違うのです……
最近、ときどき変な汗をかくようになりました。暑いときや運動したときにかく「代謝がいい」というような汗のかき方とは違うような気がして、何でもないときに大量に汗をかいてしまうときがあります。
自律神経の乱れからそういう症状が出るとも聞きましたが、関係あるのでしょうか?
まだ30代なのですが、プレ更年期というものなのかなと心配しています。今からできる対策があれば教えてください。
(なっつん さん/30代・会社員)
A:「プレ更年期」は30代から。日常生活の改善で症状を和らげることができます
30代後半~40代半ばは「プレ更年期」に当てはまります
年代によって訪れる「プレ更年期」「更年期」「ポスト更年期」
今回はときどき変な汗をかくというなっつんさんからのご相談です。
一般的に日本の女の人の平均閉経年齢が50歳前後といわれており、その前後5年間が「更年期」と定義されています。
30代のなっつんさんは年齢からしても更年期ではないのですが、閉経にはまだ時間があっても閉経に向けて心身の変化が生じ始める30代後半から40代半ばの時期を「プレ更年期」といいます。
逆に50代半ば過ぎは、ポスト更年期といわれ、基本的には心身が落ち着きを取り戻すようになります。
女性は卵巣の中に数十万個ほどの卵子が入っている袋である卵胞を持っています。卵胞は毎月1個ずつ卵巣の中で成熟し、その過程で卵胞ホルモンであるエストロゲンを分泌します。
そして成熟した卵胞から卵子が排出され排卵が起こります。排卵後は卵胞から少量のエストロゲンと黄体ホルモンであるプロゲステロンが分泌され、それが止まると月経が起こります。
この女性ホルモンを分泌している卵胞は加齢によって減少していくのですが、とくに37、8歳を過ぎたころから急速に減少し、50歳前後でほぼ消滅するといわれています。
卵胞が急速に減少する時期が「プレ更年期」、消滅する時期が「更年期」にあたります。女性ホルモンの分泌は脳でコントロールされていますが、卵巣の機能低下により、脳からのコントロールがうまくいかなくなると自律神経が乱れ、プレ更年期、更年期のさまざまな症状を引き起こす一因となっています。
なっつんさんの汗のかき方が、暑さからではなく突然大量にかくものであれば、それは「プレ更年期」による症状の、自律神経の乱れが原因かもしれません。
更年期の主な症状と対策。基本の「運動」「休息」「食事」
エストロゲンなど女性ホルモンの急激な減少により自律神経が乱れると血管が拡張することによって、
● 突然カーッとのぼせる
● 顔や首がほてる
● どっと汗が出る
● 顔は熱いのに手足や腰が冷える
● 夜中に大量の汗をかく
などの症状が出て、これらの症状をまとめて「ホットフラッシュ」といういい方もされます。
対策として、一番大切なことは日常生活の改善、つまり休息、運動、食事という基本的なことを整えることです。
規則正しい生活をすることで自律神経のバランスを整えることが大切です。
まずは睡眠をしっかりとる。そのために、寝る30分前はスマホやパソコンを見ない、寝る2時間くらい前には入浴を済ませるなども大切です。
適度な運動をする。運動は血行を改善し、眠りの質の向上が自律神経にも良い影響を与えますので、出勤や買い物の時などに15分くらいの早歩きや自宅でのストレッチやスクワットなども効果的です。
そして、バランスの取れた食事が大切です。とくに豆腐や納豆、豆乳など大豆製品に含まれるイソフラボンは女性ホルモン作用があるため、おすすめです。
「プレ更年期」におすすめの漢方
漢方薬では血流を良くして自律神経を整える加味逍遙散(かみしょうようさん)や元気をつけて汗を落ち着かせる防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)などもおすすめです。
それでもつらい場合には卵巣や子宮の病気も起こりやすい年齢ですので、一度は婦人科で検診を受けておくことも安心です。
採血でホルモンの値を測ったり、必要に応じて漢方薬の処方や低用量ピルなどの治療なども行います。
最後にプレ更年期は行ってみれば生理的な加齢に伴う変化で誰にでも起こる生理的な変化です。あまり心配せず、上手につきあっていくという心構えも大切です。
今回の記事がなっつんさんはじめ、プレ更年期のさまざまな症状にお悩みの皆さまのお役に立てれば幸いです。
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來村昌紀(らいむら・まさき)
頭痛専門の脳外科医として大学病院に勤務しながら漢方専門医の資格を取得。2014年、千葉県に、「らいむらクリニック」を開設。著書に『頭痛専門医・漢方専門医の脳外科医が書いた頭痛の本』『漢方専門医の脳外科医が書いた漢方の本・入門編』(ともにあかし出版)など。YouTubeチャンネル『らいむらクリニック チャンネル』でも、頭痛や漢方のお話を解説。
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