• 欲しいものが手に入らないと嘆くのではなく、周りを見渡し、考え、手を動かす。日々の積み重ねが暮らしを豊かにしてくれます。今回は、エッセイスト・石黒智子さんあるものと暮らす工夫を楽しみについて伺いました。石黒さんには、工夫のある暮らしがもたらした二つのことがありました。
    (『天然生活』2020年8月号掲載)

    工夫のある暮らしがもたらしたもの

    ひとつは名称にとらわれない発想です。編みものと裁縫がまったくできません。

    器用でセンスのいい姉は布を買って自分で型紙をつくり、エプロンを縫います。私はエプロンを買って自分仕様に縫い直します。

    丈を長くしたいときはバンダナを繋ぎ、ひもをハンカチに替えると結びやすく、洗濯機のなかで絡みません。ジャンパースカートをエプロンにする場合は、乾きやすさ優先でポケットを外します。

    冬用はオーバーブラウスや裏地なしのワンピース。ゆったりLLサイズで、頭が入るようにボタンをずらし、腕まくりができるように袖口にシャーリングテープを入れます。

    50代ではリネンの重さが気にならなかったけれど60代になってからは洗濯機から取り出すのさえ苦痛です。エプロンは1年中コットン。

    エプロンにしたいとずっと探しているのは、いつかフランス映画で女性画家が着ていた小さな丸衿で、ギャザーたっぷりのスモック。色は黒でした。イメージをしっかり頭に入れておくと出合えます。

    もうひとつはシンプルな暮らし方。使えるものを選別できるから、不要なものを抱え込みません。

    使えるものは「暮らしに似合うもの」「手持ちの道具を使って加工できるもの」「軽いもの」です。必要なものは手元にある材料と道具でつくれると思えれば、急いで買い探すことがなくなります。

    「せっかく買ったのだから捨てられない」というジレンマに陥ることがありません。

    先月、炊飯土鍋を二合炊きから一合炊きに買い替えました。一合炊きでもぎりぎり二合炊ける、ちょっと大きめタイプで、電子レンジにも対応します。

    炊飯は直火で、電子レンジでは蕎麦がきをつくります。そのまま食卓に置きたいから鍋敷きがあるといいと思いついて、30分でつくりました。

    お店やインターネットで商品を探す時間を、工夫のヒントになる読書や映画鑑賞に費やします。

    遊び心ある工夫で窓辺を楽しく

    東の窓辺にテラコッタのプランツポットを吊るし、春〜秋は多肉植物、冬は庭で育った秋色アジサイとアナベルのドライフラワーを飾っています。

    画像: LED用の電池は息子の誕生祝いにいただいた木の車に荷台を手づくりして収納。車輪はジーンズのタックボタン。アルコールの色が青の寒暖計は英国製

    LED用の電池は息子の誕生祝いにいただいた木の車に荷台を手づくりして収納。車輪はジーンズのタックボタン。アルコールの色が青の寒暖計は英国製

    画像: 遊び心ある工夫で窓辺を楽しく

    電池で点灯するクリスマスツリー用のLEDも吊るして。

    外がまだ暗いうちにひとり起きた朝は、窓辺のLEDと食卓のキャンドルのもとで朝食をとります。

    白いデイジーでシーツの修繕

    シーツやふきんに小さな穴を見つけたら、広がらないうちにすぐに修繕。

    画像: 気づいたらさっと取りかかれるよう、花びらの形に切ったネームテープを裁縫箱に入れておく

    気づいたらさっと取りかかれるよう、花びらの形に切ったネームテープを裁縫箱に入れておく

    ネームテープを花びら形に切ってアイロンで貼り付けます。穴が小さいうちにふさいでおけばシーツもふきんも長持ちします。

    器用な人は刺しゅうやアップリケを縫い付けるのでしょうが、私の腕ではアイロンプリントがせいぜいです。



    <撮影・エッセイ/石黒智子 文/嶌 陽子>

    石黒智子(いしぐろ・ともこ)
    エッセイスト。書籍や雑誌などを通じて暮らしの工夫や道具の選び方を提案。著書に『60代 シンプル・シックな暮らし方』(SBクリエイティブ)。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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