(『天然生活』2021年1月号掲載)
自分を大切にするためにも、片づけは“家族全員”で
訪ねたのは土曜日。
3人の子どもたちがにぎやかに遊ぶなか、親の「片づけよう」のひと声でそれぞれがサッとお片づけ。一瞬でリビングがきれいに整えられました。
「片づけを私ひとりが担うと、いつも私がやることになる。そうならないよう、家族全員が片づけられる仕組みをつくってあるんです」
この様子からは想像もできませんが、実は水谷さん、10年前までは片づけが苦手で、家事をうまくまわせないことが長年の悩みでした。
心の変化が生まれたのは、長女が誕生した直後のこと。
「それまでは自分ががんばればどうにかなる、と無理をしていたんですね。けれども出産後、それが限界を超えて産後うつのような状態になってしまって。夜、夫が帰宅すると、真っ暗でぐちゃぐちゃの部屋に私が座っている。極限状態だと気づいた夫が『もう家事は何もしなくていいから』といってくれ、一気に心が救われました」
家を整えたら、長年の悩みだった家事が楽になった
気持ちは軽くなったものの、部屋は変わらず手のつけようもない状態。探しものには時間がかかり、着替えは洗濯物の山から引っ張り出す……。
この状況を抜け出したいけれど、自分ではどうにもできない。藁にもすがる思いでお願いしたのが、プロの片づけ相談サービスでした。
部屋の現状を診断してもらい、具体的なアドバイスを受けると所有物は3分の2に減量。さらに頻度や用途で分類することで、みるみる部屋が片づいていき、「家を整えるって、こういうことか」と確かな実感がありました。
家事が楽になり、怒ったりイライラしたりすることも減ったとか。
この経験から、現在は自身も整理収納を教えるアドバイザーに。
「いまでは夫も自発的に家事をしてくれています。子どもの忘れものが多ければ、その子が悪いのではなく、忘れない仕組みを一緒につくればいい。整え方を見直してみると、解決の道があるはずです」
水谷さんの「心の整え方」
夫婦のコーヒー時間
以前は手軽な1杯用のドリップタイプで愛飲していた水谷さん。夫婦で在宅が増えたことで、豆からコーヒーを楽しむように。
ネイルをして心を穏やかに
子どものころから、イライラすると爪をかむくせがあったそう。ネイルを習慣にしてから、ピタッとなくなった。
外出自粛で花を買うように
花のセレクトは、部屋の写真や花瓶の高さを伝えて、フローリストにいつもおまかせ。手入れが少なく、長持ちするものを中心に。
〈撮影/鍵岡龍門 取材・文/大野麻里〉
水谷妙子(みずたに・たえこ)
「無印良品」で生活雑貨の企画デザインに13年間携わり、2018年に独立。著書に『水谷妙子の取捨選択 できれば家事をしたくない私のモノ選び』(主婦の友社)など多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです