(『天然生活』2021年1月号掲載)
並べて、そろえて、いつどこを見ても心地よく
「どこを見ていただいても大丈夫ですよ」。
住んで一年半というマンションにおじゃましたところ開口一番、そう宣言をされました。
インテリアスタイリストとして長らく活動し、「素敵な家づくり」の名手である洲脇佑美さん。
ご自身の家も、美しさ、気持ちよさこの上なく。心を込めて選ばれたものが空間のなかにすとんと収まり、それぞれが仲良く調和し、「すっきり」をつくり出しています。
「仕事柄、素敵なものに出合うことが多く、それなりにものが増えてはいます。でも、シンプルなデザインのものが好きなので、それが雑然と見えない理由かもしれません」
さすがなのは「いいな」と思うものに出合った瞬間、そのものが家に並ぶ様がくっきりと頭の中に描けるのだといいます。
そして、デザインもさることながら、気をつけるのはサイズ感。
「長年、もの探しを続けているせいか、お店で道具や家具を見たときにだいたいサイズ感がわかるんです。これなら3つ並べて引き出しに収まるぞとか、あの引き出しにぴったり入りそうとか。ファイルやボックスなど収納品に関しては、一個単体で使うことはまずない。同じフォーマットのものをいくつか並べ、いろいろなものを仕分けて入れたほうが気持ちいいですし、複数で並べたほうが空間にまとまりが出てすっきりします」
棚や引き出しの“見えない場所”も整理整頓を心がけて
とはいえ、ほとんどの方が目測でサイズを導き出すのは至難の業。たとえば指を広げた幅が20cmとか、身体のパーツを使ったマイ物差しをもっているといいと話します。
そんな話を聞きながら、洲脇さん宅ツアーは続きます。
「どこでも」という言葉に甘え、キッチンの棚、引き出しの中、箱の奥と隅々まで見せてもらいました。どこも完璧に整っていて本当に驚きです。
「扉を開けたときに“わあ、かわいい!”とテンションが上がるといいなと思って、見えない棚の中とはいえ、整えるよう心がけています。素材別で並べたり、取っ手の方向をそろえたり、お気に入りの収納ボックスを使ったり……」
暮らしの各所に「なんか、かわいい」という高揚感をちりばめ、上機嫌を保っている洲脇さん。
買い物は単なる消費ではなく、日々を豊かにしてくれる暮らしの財産を増やすことに近いといいます。
洲脇さんの「心の整え方」
ヒバチップで森林浴
玄関、リビング、棚の中など、部屋の至るところに置いた「カルデサック」のヒバチップ。
「ガラスびんに入れたり、お皿に盛ったりして置いています。香りが強すぎず、清々しい木の香りにリラックスできるんです」
香りが弱くなってきたら、オイルをかけると、森の香りはよみがえる。
お茶の時間で句読点
朝から晩まで切れ目なく仕事のある洲脇さん。呼吸が浅くなってきたなと思ったら、お茶を淹れて頭をリセット。
紅茶、ハーブティーなどたくさんのストックの中から選ぶ作業も息抜きに。
コーヒーも大好きで、豆を手動ミルでゴリゴリひくことで無心になり、頭を休ませる効果も。
〈撮影/枦木 功 取材・文/鈴木麻子〉
洲脇佑美(すわき・ゆみ)
大阪芸術大学空間デザインコース卒業後、インテリアショップの店長を務め、その後インテリアスタイリストに。http://www.suwakiyumi.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです