(『天然生活』2021年1月号掲載)
林さん流「心安らぐ空間」のつくり方
暮らしの中に句読点をつくる
考え事をするときは、場を整えて中国茶を。庭の花は好きな花器に。心安らぐ時間をもつことで、気分も空間もすっきりと整います。
日常の区切りにお茶の時間をもつ
茶人・堀口一子さんの稽古を3年続ける。「ステイホーム中、中国茶が心の支えになりました。ゆっくり時間をかけて飲むと精神統一するように落ち着きます」
東寺の市で見つけた入れ子のかごに中国茶器を。古い茶壺、市川孝はじめ作家の茶杯など、茶器を使うのも楽しみ。
作家に「中国茶器をつくってみませんか?」と持ちかけることも。温まる蜜香紅茶など、季節や気分でいろんなお茶を。
忙しい毎日だからこそ季節のしつらえを
庭には日本画家の義父が植えた椿やみかん、柿、栗の木などが。「花屋さんの美しく整えられた花はちょっと苦手。自然のまま伸びやかに生けます」
生平桜子(おいだいらさくらこ)のモノクロの絵のそばに庭の草花を飾って、空間に色を添える。器選びは、植物の色や枝ぶりに合わせて。
毎年、年賀状は木版画を制作し、壁に貼って飾る。「身のまわりにあるものから、季節を感じられるように」
林さん流「昔の道具」の取り入れ方
古いものを生かして整える
昔の家具や布はつくりがしっかりしていて味がある。暮らしのなかにさりげなく取り入れて、雰囲気よく。
選ぶのが楽しくなる水屋箪笥にしまう
板を入れて補強しながら愛用する水屋箪笥。
「以前は磨りガラスや木の扉のものを使っていましたが、ガラス戸のこれに変えて、使い勝手がよくなりました。作家もの、古いもの、いろいろですが、サイズや形状をそろえて収納しやすく」
お気に入りは金継ぎして長く使う
陶芸家・島るり子のカップなど、好きな器が欠けたら金継ぎして美しく整え、現役続行。
「喫茶室で使っていると頻度が高い分、欠けたり割れたりするのが忍びなくて、夫が金継ぎを習得しました」
新たな表情も生まれて、愛着も増す。
古い布を縫い合わせて生かす
骨董市などで見つけた古い藍染やリネンなどを韓国のチョガッポ(はぎれのパッチワーク)のように縫い合わせ、茶壺入れやティーマットにして、暮らしのなかで愛用。
林さん流「気分を上げる」ための工夫
片づけを楽しくする道具を使う
毎日繰り返すルーティンこそ、気持ちが上がる器や道具で。佇まいの美しいものを、用途に縛られず、日常的にどんどん活用。
よく使うすくう道具は立ててしまう
れんげやスッカラ、レードルなど、すくう道具が好きで、つい集めてしまうという林さん。よく使うお気に入りは素材や形で分けて、容器に立てて入れ、水屋箪笥に。
「容器ごと取り出せるので、片づけも、配膳のときも楽です」
金網職人につくってもらった水切りかご
骨董市で古い鉄製の水切りかごの格好よさに魅せられて、「鳥居金網工芸」に特注。
「鉄は錆びて穴が開く。ステンレスや銅ならできるよといってもらって」
水切れがよく、早く乾き、佇まいが美しい。「木と根」のオリジナルとして販売。
好きな香りで空間を整える
家にお客さまを招くとき、心を配るのがにおい。
「暮らしていると気づかないものなので、お香を焚いたり、トイレにはドライハーブを置いたり」
松葉勇輝の陶箱に、「リスン」の竜脳(りゅうのう)とミントをアレンジしたお香「FOLLOW」を。
かごにざっとまとめておく
たまに使うレードルやしゃもじはかごに入れてキッチンの棚に。
「かごやざるも好きでいろんな素材、地方のものがあります」
家族みんなが使う日用品は取手のついたかごにまとめ、どこでも持ち運べるようにするなど、用途で使い分け。
〈撮影/伊藤 信 取材・文/宮下亜紀〉
林 七緒美(はやし・なおみ)
京都「木と根」店主。2020年に分室「gallery LAKEWALL」をオープン。著書『ひとり時、円居時』(KADOKAWA)では器の楽しみを紹介。木と根 kitone
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです