(『天然生活』2023年11月号掲載)
家族の幸せを一番に、未来のためにお金を使う
「お金はため込むよりも、使って循環させたい。『買い物は未来への投票』と母もいいますが、ちょっと高くてもオーガニックを選ぶとか、地元で買うとか、すぐに成果は見えなくても未来がいい方向に進むように、小さな期待を込めてお金を使うように心がけています」
島根・石見銀山にある大森町で代々暮らしてきた実家を引き継ぎ、5人を子育て中の松場奈緒子さん。この地で「群言堂」を始めた大吉さん、登美さんの三女でもあり、中学1年の長男が小さかったときにUターンしてきました。
「孤独に子育てしていた時期もありましたけど、ここでは周りのみんなが子どもたちを見守ってくれます。家や地域のしきたりを知らないまま、のほほんと育ってきた三女ですがいまは大事にするのが当たり前になりました」
学童保育を立ち上げ、子どもたちは地元の伝統芸能「子ども神楽」に舞手として参加。お金を使うときも地域の力になりたいと思っています。
「電気代がかさむとストレスだけど、ストーブは地元の間伐材を使っているから薪代は、少々かかっても気持ちよく払えます。
近所の商店は街の量販店に比べると高いものもあるけれど、ここに暮らす私たちにとってなくてはならない存在。ご近所同士で助け合う、お互いさまの感覚ですね」
松場さんにとって一番大事なことは家族が心地よく暮らすこと。
スムーズに生活がまわるようにオンラインショップやネットバンクなど便利なツールも活用。高価な買い物や資産運用は夫と話し合って決めています。
子どもたちにもお金の感覚を身につけてほしくてお小遣いはお手伝い制に。使い道は子どもたちにまかせています。
「家族やだれかのために働いて、みんなからの“ありがとう”の気持ちがお小遣いになります。すぐ使う子も、ためる子もいて、5人それぞれで面白いですね。
先日、地元のイベントにお小遣いを握りしめて行ったら、ジンジャーエールが400円で、長男が『高くてびっくりした』って。
ちゃんとお金の価値をわかってくれているんだなってうれしかったですね。単に『安い・高い』で買い物するのではなく、どうしてその値段になるのか、自分で考えてくれるようになったらいいなと思います」
松場奈緒子さんの、お金の管理
子どもたちが将来住みたいと思う持続可能な循環をつくりたい。
お金を使うときも、増やすときも、未来がよりよくなるように考えながら、選択しています。
管理01 ご近所の商店での買い物は“お通帳”につけて月払い
「玉留屋」は大森町になくてはならない商店。食品や日用品がそろいます。
「買い物したら“お通帳”につけてもらって月末にまとめて支払います。お金を持っていかなくていいので、小さい子にもおつかいを頼めます」
都心の大型店に比べると輸送費などで割高になるけれど、「界隈のお年寄りにとっても大事な店。子どもたちがその背景を考えてくれるようになればいいなと思います」
管理02 子どもたちの将来のために、信頼できる会社へ投資
学資保険には上限額があるため、子どもたちの将来を考えて投資信託をスタート。
夫婦で選んだのが「鎌倉投信」。働く人や社会、自然環境などを大切にする、いい会社への投資をモットーにしています。
「自分たちも地元で事業をしているので、これからのためにいい取り組みをする会社を応援したくて」
未来のためにお金が使われて、将来の備えにつながる、ぴったりの資金運用です。
〈撮影/渡邉英守 取材・文/宮下亜紀〉
松場奈緒子(まつば・なおこ)
島根県大田市大森町にて、5人の子育て中。「石見銀山 群言堂」創業者・松場大吉、登美の三女。NPO法人石見銀山いくじの会理事を務め、都市部の子育て家族を中心に受け入れる保育園留学®もスタート。Eテレ「子育て まち育て 石見銀山物語」でも暮らしが取り上げられる。https://www.gungendo.co.jp
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
天然生活2024年11月号の特集は「私流、お金をかけない楽しい暮らし」。
野菜や保存食をつくったり、シェアしたり。
支え合い、自然とともに営む暮らしからは真の豊かさとは何なのかが伝わってきます。
俳優の財前直見さん、手づくり暮らし研究家の美濃羽まゆみさん、布作家の早川ユミさんに、周囲とつながりながら支え合う新しい暮らし方を取材しました。
ぜひご覧いただけましたら幸いです。
天然生活 2024年11月号
https://shop.tennenseikatsu.jp/items/91553830